>>336
「少佐!まだ二つしか打っておりません。手をどかして。さあ立って。こちらを向いて下さい!」
 菅井の臀部は二度目の鞭で早くも血液が滲みはじめた。
 三度目は正面から、太腿に向かって打った。
 菅井はかすれた悲鳴をあげた。
 広瀬は鞭を捨て、痛みに震えうずくまる菅井の髪を乱暴に掴みソファーに押し倒した。
 広瀬の脳裏に、守屋を抱いた時の事が思い出された。
 血は勘弁してくれと口では言いながら、菅井を鞭で虐げいたぶる事でいきり立つ自分の一物に、自分の守屋に対する慈しみや愛がまるで偽物のように感じられ、とたんに嫌気が差した。
 乱れて横たわる菅井を尻目に広瀬は立ち上がった。
 菅井はこのまま終わらすまいと、広瀬の脚に絡み着いたが、無惨に振りほどかれソファーに投げ出された。
 「広瀬兵曹長は用件を終わり退出します」
 敬礼すると踵を返し菅井の執務室を後にした。
 
 菅井は高ぶる気持ちを抑え切れなかった。
 立ち上がり執務室を施錠した。
 机の引き出しの中から注射器と薬液を取り出し、それを左腕の静脈に注射した。
 広瀬に打たれた臀部と太ももの鞭の跡が、脈を打つ度に疼いた。
 その跡を指でなぞっていると、やがて薬液による覚醒作用が出現した。
 生傷の疼きと薬の覚醒作用が精神を高揚させ、乱れる思考に身を委ね、快楽に打ち震えた。