0326名無しって、書けない?(玉音放送)
2018/12/29(土) 21:03:46.00ID:8l22uf9G0NIKU「伍」
目が覚めた。
時計は三時をまわっていた。
守屋はベッドから立ち上がりカーテンを開けた。
夜明け前の輪郭の冴えた月が白いシーツを眩しく照らした。衣服は患者衣に交換され、飛行服は水が満たされた洗面器の脇に折り畳まれていた。
守屋はベッドに横たわると、枕に頬を擦りつけ指でなぞり抱きしめた。
広瀬の背中の匂いを思い出して顔を埋め、起床までの数時間、再び枕を抱いて眠りに就いた。
熱は下がっていた。
点呼のラッパで再び目を覚ました。
軍医の回診を受けた。
ウィルス性の風邪と診断され、数日の休養が必要とのことであった。
広瀬も守屋の回復迄待機となった。広瀬はなるべく守屋の側に居るよう努めた。
二人で語り合いたかった。そしてそれは守屋も同じ思いであった。
駐機場には珍しい機体が停まっていた。
前線での指揮連絡を主任務とするこの指揮連絡機は、最高速こそ180kmと低速だが、離着陸距離が70m前後と驚異的な離着陸性能を有した機体であった。