>>315
広瀬は背中と掌に、守屋の華奢で軽量な身体の体温を感じて照れ臭くなったが、存在するだけで話題になるほどの美しさを持った女と行動を共に出来る、男としての誇らしさを感じていた。
 守屋は自分で歩くと言ったが、まわりの勧めもあり、それに何より、もう気だるかったので広瀬に身体を預けた。
 広い背中が頼もしかった。
 煙草を吸わぬので嫌な体臭もせず、飛行服からは乾いた太陽の匂いがした。守屋は密かに自分の頬を広瀬の背中に擦りつけ、その匂いを味わった。
 医務室に着いて欲しくないと思った。
このままずっと私を背負って飛行場を歩き続けろと広瀬に命じたかった。
 そうして医務室に着く間に、守屋はそのまま広瀬の背中に涎を垂らして眠ってしまった。