>>304
守屋と広瀬の搭乗した司令部偵察機は、滑走路の端から離陸滑走を開始した。
主翼が揚力を得られる速度に達すると、ほんの少し操縦悍を押して水平尾翼を浮かせた。
タイヤが地面から離れると速度は更に増してゆき、下から突き挙げられる地震の様な衝撃は消えて、大きな波を向かえて越えて行く船の様な大きな揺らぎに変わった。
広瀬はその波を巧みに抑え込み飛行場の場周経路を出て南に向かった。
 高度を上げながら変針点で変針を行い、酸素マスクを装着した。酸欠事故が多発していた司令部偵察機は、風防の形が変わった三型からは搭載酸素の量を大幅に増やして搭載されていた。
巡航高度に達すると、プロペラ回転数を調整した。この機の最高巡航速度が得られる高度のは5000m-6000mで、時速630qに達する。敵機にはこの速度を瞬間的には超える機体は存在はしたが600mを維持して巡航出来る機体は無かった。
 広瀬は自動操縦に移行し、八の字の操縦捍から手を放した。
 二日酔いは簡単には覚めてくれなかった。