0145ニャンコ坂46(catv?)
2018/03/07(水) 04:00:47.10ID:pIOZQzaHM続けて語り出した鳴滝のその予想外の言葉に、何事かを言いかけた芽依が口を閉じた。
「逃げ場が無かったんだなってさ。俺達はいつのまにか忘れちまっているが、彼等の世界は家か学校しか無いんだ。クソ狭い世界さ。
親が逃げ道を作ってやれればいいが、その親さえ……」
そこで鳴滝は、やっと冷めた缶コーヒーを開けて口を付けた。
「常識や世間体なんて、くだらねぇプライドの為に子供の選択肢を削っちまう。それが子供の命を削っているなんて知らずにさ」
それまで宙を見ていた鳴滝が、芽依へ、そして史帆へと順に視線を向けた。
「お前ら、自分がガキじゃないと言い張るなら、もっとしたたかにしなやかに生きてみろ。逃げたっていいんだ。何に価値を求めるかは人それぞれだろうが、それだって生きていてさえこそだ。銃を手にしているお前らなら尚更だ」
そう言った鳴滝の視界の中で、芽依がニヤリと笑った。
「ひょっとして……おじ様はいじめられっ子だったの?」
「と、思うだろ?それが違うんだなぁ」
「じゃあ、何なの?」
「いじめっ子をぶん殴る方さ。見ていてムカつくからな」
「格好つけ過ぎ」
「お陰で敵ばかりだった。でもさ、泣いてる奴が笑うのを見ると、それも悪くない。自己満足の偽善者かもしれないが」
「苦っ!」
鳴滝の言葉を芽依が遮った。
「ブラック……あたし、苦手」
手にした缶のラベルを見た芽依がそう呟いた。
「どんな世界も、そのブラックコーヒーと同じさ。その苦味さえ旨いと思えるようになったら、一人前なんだ」
そう言った鳴滝は、揶揄うように笑顔を見せた。