「………………」
“黒い私”……ねるは何か言った。

彼女……ねるは私にキスをすると、出てきた時のように影になって消えた。

私は白い部屋に一人になった。


長い時間が経った……。


男の人の声が聞こえた……。
「お時間です」

液体が落ちた……。

私は両手を見た……。
……赤い……。

次に、目の前が赤くなった……。
私が額に手をやると、何かが流れるのがわかる。
血だ……。

下を見た……。

私は、白いドレスが徐々に赤く染まるのを見て悲鳴をあげた。

床に大きく広がる血。
白い部屋の床一面が赤くなった。

床に映った顔を見て、私はもう一度悲鳴をあげた。
それは、長浜ねるの顔ではなかった……。


……………………


『こころのブログ』

昨日、最愛の娘・姫乃が天国に旅立ちました。
娘は、あるアイドルグループの大ファンで、そのイベントに向かう途中に交通事故にあい、昏睡状態が続いていました。
私は、受験生である娘がアイドルグループに夢中になっているのを知っていながら黙認していました。
娘の表情が変わってきたからです。
勉強に追われて暗く沈んだようになっていた娘の表情が、幼い頃のように明るく輝いているように見えたからです。

私は、娘の笑顔を奪った加害者を許す事はできません……。
娘は、おそらく、心躍らせてイベントに向かっていた事でしょう。
そして、まさか歩道に車が飛び込んでくるなどとは思っていなかったでしょう。
私は、このような事態が再発しないように…………



『ねるねる』(完)