私の名前は、桜沢姫乃……。
高校三年生で受験生……。

通っているのは女子校で、勉強一筋。彼氏もいない。
かなりの難関大学を目指しているため、いろいろな娯楽を封印している状態。

日曜日……夕食後、つい寝てしまったため、変な時間に目を覚ましてしまった。
私はテレビをつけた。こんな時間にテレビを見るのも久しぶりな気がする。

女の子たちが、司会の人にツッコまれて困ったり、笑ったりしていた。
私はその子たちの名前を知らないし、初めて見る子ばかりだった。
鳥居坂46というアイドルグループらしい。

司会の人が言った。
「なぁねる」
ナーネル?

その後の話を聞くと、司会の人が話しかけた髪の長いたれ目気味の女の子の名前が“ねる”というらしい。
“ねる”
変わった名前……。

私はちょっと興味を持って、スマホで検索してみた。
「鳥居坂46 ねる」

私はその子、“長浜ねる”の情報をいろいろと流し見した。
すると、かなりの高偏差値の高校に通っていた事が書いてあった……その子がアイドルに……?
私には理解できなかった。

……でも、いろいろな夢を追う人がいてもいいと思い直した……半ば無理矢理に。
……でも、でも、それはかわいいから選択できた夢……。

私はなんて嫌な子だろう……。
私はテレビを消した。

……………………

私は彼女たちの出ているテレビ番組を見るようになった。
最初は見分けがつかなかった彼女たち全員の顔と名前もわかるようになった。

私は鳥居坂46のコンサートや握手会にも行くようになった。
親戚にファンの男の子がいたのでいろいろと教えてもらい、連れていってもらったのだ。
「勉強が疎かになっている」と親に叱られないようにいろいろとごまかした。

かわいい人、きれいな人、面白い人、大勢いたけど……私の目当ては長浜ねるさん……“ねる”……だった。
私はねるが気になって仕方がなかった。最初は単に名前と学歴で気になったくせに……。

私は握手券をいつも1枚しか持っていけないので、せっかく彼女に会える握手会でもただ黙って彼女の手を握るだけだった。
たくさん話をしてみたい……。私は……ねるが……。