……今日は鳥居坂46の握手会……。

ファンのみなさんとの交流の日だ……。
一人一人とはほんの少しの時間だけど、みなさんと握手をして言葉を交わす日。

最初の人だ……。
「こんにちは」
私はにっこり笑って挨拶をした。

「ひめのちゃん、『TORIBINGO!』の仮装、笑っちゃったよ!」
……えっ?
「うふっ、ありがとうございます。がんばりました! ……あの……」
「お時間です」
次の人の番になってしまった……。

次は女の子だった。
「わぁ、女の子だぁ! 来てくれてありがとう! 嬉しいです」
「女子でも、ひめのちゃん推し多いんですよ。また来ます。C.N いちごみかんジ……」
「お時間です」
……えっ……。

ひめのって誰? ファン間で通じるあだ名?
そういう名前のメンバーもいない……。

次の人……。
「こんにちは!」
「ひめのちゃん、ドラマでいつも“たくらみ役”っぽいよね、ヒロイン待ってます」
「色んな役をいただけるように演技をがんばりまーす!」
「お時間です」
……やっぱりだ……。

時間が過ぎ去っていった。私のレーンに並んだ人はみんな私の事を“ひめの”と呼んだ……。

次の人……。
「ねるちゃん、いつも応援してます」
「あっ! はい! どうもあ…………」
ねるちゃん……!

私がその人を見ると……。
黒いドレスを着た“私”だった……。

目の前の景色が歪んだ……。

……………………

そこは、例の白い部屋だった。

「ねるちゃん、いつも応援してます」

「……ふざけないで!」
私は“黒い私”に怒鳴ったあと、床に伏せて泣いた。