「おい、何かやれ」
王冠被りし孤高の美女が、愛想なしに命令を下し、どうしようかと戸惑った。
心情見えぬその表情は、白粉さえも動かない。
真面目に振る舞う道化師は、彼女の手をとりキスをした。
「失礼します、女王陛下」
マントに隠れし小さな胸に、道化師の耳がくっついた。
明らかなる心拍は、鼓膜を震わして、道化師の鼓動も同調した。
僅かに舞い散る白粉が、道化師の鼻先に降りかかり、
見えぬ真上の口紅が少し緩んだことを知らせてくれた。