夕日が完全に落ち、空が暗くなった。

神村は、たこ焼きをもぐもぐ食べながら言った。
「ねぇ、平手君……もしかして……」
「何?」
僕は聞いた。
「本当は他にいたんじゃなーい?」
神村は僕の顔を覗き込んだ。
「一緒に来たかった人……あっ、たれた!」
神村の金魚柄の浴衣にソースの染みが付くところだった……。

「いや……別に……」
「どぎまぎさんデター」
神村は笑いながら僕を指さした。

明るい光のあとに花火の音が大きく響いた。
「……き…さんとか……」
黄色、ピンクの光に照らされる神村の横顔。
彼女が言った事はよく聞き取れなかった。

「でもね……嬉しかった……」
上空を見たまま神村が言った。

次の瞬間、空には満開の花……。
満開の花は鮮やかに……そして、短く消えていった。

「私の小さな夢……かなった……」

「私を誘ってくれて……ありがとう……」

神村……さっき言った冗談の夢は取り消すよ。
僕の小さな夢もここにある……。

僕が本当に一緒に……
本当に……
こうやって隣り合って花火を見たかったのは……


神村莉菜、キミだ……。


二人のセゾン。
これから訪れる秋も冬も……次の夏も……キミと恋をする。

『-FLOWER- てくりな』(了)