私が目覚めた時、目の前にある半透明の壁のようなものに私の顔が映っていた。
湾曲しているので、映る私の顔も歪んでいる……。

私は眠っていたらしい。横たわった身体のまま、頭だけ起こして上下左右にゆっくり振ってみた。
(これは……ベッド?)
横たわっている部分は弾力のある白い材質で、左右……足元は青い金属でできた、ほぼ人間の身体がぴったり収まるようなもの……。

私は半透明の壁を押してみた。ほとんど抵抗もなく、片開きドアのようにスッと開いた。
(……蓋……?)
私は身体を起こした。

そこは、青い照明が微かに灯る薄暗い部屋だった……。足元を照らすライトの光が線のように続いている……。
私は自分が横たわっていたものから出てみた。

カプセル……。SF映画でよく出てくる、蓋つきのカプセルだ……。
部屋を見回すと、私が入っていたカプセルと同じ形をしたカプセルが一列に並んでいる。
私は指でカプセルの数を数えてみた。32……。いや……31……。

私はおかしな事に気づき、床を歩いていった……。
整然と並ぶカプセル。だけど、一か所だけ、そこにあるはずのものがぽっかりとない。

私はさらに観察してみた。
両側のカプセルの上部に「No.13」「No.15」と刻印がある……。つまり、「No.14」のカプセルがない。
私は奥の「No.32」まで見たあと、小走りで戻って自分のカプセルを見てみた。そこには「No.3」と刻まれていた……。

私は自分の状況について、整理してみた。
私の名前は、内村渚……。

内村渚……? 違う。それは、私の本当の名前じゃない……。私の名前は……。
軽い頭痛がした。
思い出せない……。私は自分の名前が思い出せずにいた。

私は、生徒たちが学校に閉じ込められるという設定のミステリー学園ドラマに出演していた……はずだった。
はずだった……というのは、今ここにいる事を考えるとどう考えても記憶が繋がらないからだ。

私は撮影の合間、控室で仲間とお菓子を食べていた。そして、ちょっと用事があって控室のドアを開けた。
そこから先の事を覚えていない。