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欅坂×不良学園ドラマ [無断転載禁止]©2ch.net

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0001ハコオシ(福岡県)
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2017/03/21(火) 18:05:56.90ID:F/Hxp16k0
小説スレに触発されて個別のスレッドを作りました。もしよろしければご覧ください。投稿は不定期的になると思います。
アドバイス・感想等があれば、ありがたくいただきます。

欅×不良学園ドラマ  一

「唯、一緒に帰ろう」
「うん」
友達に声をかけられて、私は鞄を手に取った。

この学校に入学してから、そろそろ一ヶ月になる。
始めは知らないことや初めてのことばかりで、慣れない気持ちで過ごしていたが、やっとこの学校の生活に馴染んできた
都立欅坂女子高等学校。格式を重んじ、友愛の精神を大切にする校風に憧れて、私はこの学校に入学した。
学校の格調の高さに相まって、その偏差値も高く、正直受験は苦労したけれど、なんとか入学することができた。
そして、一年生の春がはじまった。
「いいよね、ここ」
私は、校舎の脇の、きれいに掃除された道を歩きながら、隣を歩く友達に言った。
「そうだね。入ってよかった」
学校の雰囲気はとても落ち着いていて、クラスの他の友達も、みんな知性と優しさをあわせ持つ、いい人たちばかりだ。
日の光を受けて白く輝く校舎の外観を見上げながら、私は満ち足りた気持ちになっていた。
「ねえ、あれなんだろう?」
すると突然、友達が前方を指差して言った。
「なに?」
私は彼女が指差す先に目を遣った。
見ると、前方の校門のすぐ外側に、見かけない姿をした人たちがいる。
「なんだろう……?」
校舎に近づくにつれて、その人たちの姿がよく見えてきた。
(なに?こわい人たち……?)
校門の外にいるのは、4人の――おそらくは――男子学生であった。
もちろん、女子高であるこの学校の生徒ではない。
見たところ、まだ10代の男子だ。
0002名無しって、書けない?(福岡県)
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2017/03/21(火) 18:07:15.72ID:F/Hxp16k0
欅坂×不良学園ドラマ 二

ただ、目を引いたのは、その出で立ちである。
学生服を着崩し、なかには明らかに私服とおぼしき衣類をそれに合わせている人もいる。
髪は染められるか、ワックスで固められるかしていて風紀が微塵も感じられないような刺々しく、物騒な印象だ。
不良、と断じるほかない4人の男子が校門の外に、行儀の悪い佇まいで、校門から出ていくこの学校の女子たちを、威圧的な目つきで見ていた。
「なにあれ……、ちょっと、無視しよう」
隣を歩く友人がそう言った。
私たちは会話をやめ、顔を俯かせた。自然と歩みもすこし早くなる。
(早く通り過ぎよう)
上目遣いに様子を盗み見ると、男たちは、検分するかのように、通り行く女子学生を見ているようだった。
校門の境界線にさしかかり、こちらをにらんでいるであろう男たちと私たちの距離が最も近くなった。
緊張が走る。
(なに……?)
そのまま通過するつもりだったが、私はただならぬ視線を感じて、ちらりとその方に目を泳がせてしまった。
やはり、男たちは私たちを、こわい眼で見ていた。
そして,そのうちの一人と眼が合った。
猫のそれのように、つり上がった鋭い眼で、その男はこちらを見ていた。
その眼に、不意に恐怖心が芽生えた。
私はとっさに視線を外し、地面を見て、そのまま歩いた。

「こわかったね」
「うん」
校門を通りすぎてしばらく歩いたあと、やっと私たちは口を開いた。
「明日、先生に言っておこう?変な人たちがいたって」
友人の言葉に私は頷いた。あんな物騒な人たちに、学校のすぐそばに居座られたら、みんなきっと不安な気持ちになってしまう。大人の人たちに何とかしてもらわなければいけないだろう。
(なんだったんだろう……?)
さっき眼があった男の鋭い眼光が脳裏に浮かんだ。

このとき胸に生まれた胸騒ぎはしばらくしても消えなかった。
0003名無しって、書けない?(茸)
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2017/03/22(水) 01:16:15.45ID:MYpnXBTid
欅×不良学園ドラマA

あの日現れた不良少年とおぼしき他校の男子学生たちが姿を現したのはあの日きりだった。
しばらくは心配していたものの、私たちは再びいつもの学校生活へと戻っていた。

「よし」
独り言が出てしまった。私は鞄の中にいれた、今しがた購入したばかりの本を鞄の外から撫でる。
(帰ったらすぐ読もう)
休みの日の今日は、街の大型書店に買い物に来ていた。

そして、気になった本を購入し、帰ろうと道を歩いていたときだった。
(あっ)
書店に隣接して建つ別の建物の入り口の脇で、座ってたむろしている二人の若い男が私の目に入った。
(また不良……?)
私は、不快な気持ちになった。先日の校門前にいた不良たちのことが思い出される。
(なんでこういう人たちって、こんななんだろう?)
私にはこういう類いの人たちが理解できなかった。
行儀の悪い姿勢で、建物の入り口に陣取って。
道行く人たちが嫌な気分になるではないか。そういうことをこういう人たちは考えないのだろうか?

先日の不良少年たちのことが脳裏に浮かんだ私は、歩きながら、その二人組に目を向けてしまった。
すると、私の視線に気がついたのか、男たちが顔をあげて、私の方を見てきた。
(いけない……)
こういう人たちと目を合わせてはいけない。
私はとっさに顔を俯かせて、その場を通りすごそうと足を早めた。
(ああいう人たちなんて、いなくなればいいのに)
ああいう、世の中の風紀を乱していて、もしかすると悪いことにまで手を出しているような人たちは、もっと大人の人とか、警察が指導するべきだと私は思う。
なんとなく私は、さっきの男たちにがいた方を振り返った。
「えっ」
私は目を見張った。
視線の先に、私の方に向かって歩いてくるさっきの二人組の姿があったのだ。
0004名無しって、書けない?(茸)
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2017/03/22(水) 01:17:01.87ID:MYpnXBTid
欅坂×不良学園ドラマ

(嘘でしょ?)
きっと、たまたま同じ方向に歩いているだけだ。
(つけてきているわけじゃないよね……)
私はわざと路地を曲がり、これが私の勘違いでることを確かめようとした。
しかし、視線の先で、男たちが角を曲がってきたのが目に入った。
「嘘っ!?」
もう偶然だと思えない。男たちは故意に私と同じ方向を選んできている。
心なしか、まだ向こうにいる男たちと目があったような気がした。
男たちが早足になるのが見えた。
私を追いかけてきているのだ。
(なんで……!?)
私は駆け出した。すこし走って後ろを振り替えると、男たちもこっちに向かって走ってくるのが見えた。
(追いかけてくる!)
私は全力で走りだした。
さっき目が合ったせいか、男たちがなぜか追いかけてくる。
そんなに走っていないうちから、もう息が乱れ始めていた。脇に抱える鞄が揺れ、後ろで結わえた髪がバサバサと肩の辺りを打つ。
どっちに行っていいかなんてわからない。角があったらとにかく曲がった。男たちから姿を隠せるように。
(まだ……?)
大分走ったが、まだ追ってきているのだろうか。私は後ろを一瞬振り返った。
「!」
だが、男たちは、まだ私を見逃していなかった。
再び前を向いて逃げる。
なんでこんなことになったのかわからない。でも追い付かれたら、きっと変なことをされる……。
「ハァ……ハァ……」
速度が落ちないように、力を振り絞りながら、私は一つの路地の角を曲がった。
だが、曲がった道の先に、人影があった。
「!」
私は体にブレーキをかけた。
勢いをなんとか殺して、立ち止まる。
そこにいたのは、一人の男――正確には少年だった。
男たちに追いかけられいている恐怖心から、私の体は、急に現れた人影に過剰に反応してしまい、びくりと足が止まった。
そして、道の先にいた、その男の子と目が合った。
0005名無しって、書けない?(茸)
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2017/03/22(水) 01:17:52.09ID:MYpnXBTid
欅坂×不良学園ドラマ

その少年は、大人しくみえる感じの、まとまった髪型で、毛先がすこし外に跳ねている。
背は中ぐらいで、体は細い。
肌の色は薄く、鼻や口、輪郭といった顔のつくりは、童顔のそれだった。
だが三白眼のその眼の眼光は鋭く、前髪で陰る険しい目元は、暗く恐しい印象を与える。
少年が帯びている雰囲気が、なにか、まがまがしいというか、異様なものに感じられた。
「……」
少年と目があった私は、体が硬直して動けなかった。
だが、私に気がついた少年は、私のことをじろりとにらみながらも、視線を流して、そのまま私の隣を歩いて通りすぎた。
(関係ない人だ……)
はっと我にかえる。
たぶんこの少年は、ただの通りすがりの人なのだろうけれど、少年から警戒心を解くことができなかった私は、通りすぎていく少年をしばらく目で追ってしまった。
すると、少年が歩いていく先から、先の男たちが追い付いてきた。
(いけない!)
私が再び逃げ出そうと男たちに背を向けた時、
「なんだてめえ」
という声が聞こえた。
振りかえると、さっきの少年が、道の真ん中で、男たちの前に立って動かないでいた。
まるで立ち塞いでいるかのように、道の真ん中で微動だにしない。
少年に気がついた男たちが彼に、因縁をつけるように近寄っていく。
(えっ……)
男たちが近づいてきても、少年はやはりその場を動こうとしない。
(関係ないのに!)
何を勘違いしたのか、男たちが少年を敵視する姿勢で、さらに彼に接近していく。
「やんのかオラ」
男たちの一方が、いかつい顔で首を傾けながら少年に凄む
このまま、喧嘩が始まってしまいそうな雰囲気だ。
(どうしよう……)
なんで男たちをやり過ごさないのか、少年の意図はわからなかったが、とにかく、このままではあの少年が、男たちに誤解されたまま、いさかいに巻き込まれてしまう。
(でも……)
しかし、どうすることもできない。



「おらっ」
男の野太い大声に、ビクッと両肩が勝手にせりあがった。
追ってきた男たちの片方が、少年に向かって、腕を大振りして殴りかかっていくのが見えた。
(!)
しかし、少年は俊敏な小さな動きでそれをかわした。
(えっ……)
拳をかわされた男は、すかさず2、3と次の攻撃を続ける。
だが、どの攻撃も少年には当たらない。巧みな動きですべてかわしている。
(あっ)
少年が、自身に殴りかかってくる男に体を近づけたかと思うと、次の瞬間、男が崩れ落ちた。
「野郎!」
それが目に入ったのか、もう一人の男が一瞬意表を突かれたような驚いた顔をして、倒れた男に立ち代わるように、すぐさま少年に殴りかかっていった。
「オラッ」
男の気炎が上がる。しかし、その威勢とは裏腹に、男のどの攻撃も、やはり少年を捉えることはなかった。
「ぐあっ」
すると、先ほどと同様、少年が一瞬のうちに男に間を詰めたかと思うと、男が少年のすぐ斜め前で、体を90度折り曲げた。
今度は何が起きたか分かった。男の腹に、少年の左の拳が、小さく鋭い動きで突き刺さったのが見えた。
0006名無しって、書けない?(茸)
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2017/03/22(水) 01:19:52.49ID:MYpnXBTid
「うっ……」
あっという間の出来事だった。気がつくと男二人は、苦悶の表情で、地面の上でのたうっていた。
私は呆然とその場に立ち尽くしていた。
少年は地面に転がる男たちを見下ろすように立っている。
(えっと……)
どうするか迷った。
少年の意図も、どうしてこんなことになったのか、この成り行きの整理もつかないけれど、結果的に少年に助けられた形だ。お礼をいうべきだろうか
(でも……)
だが、倒れているとはいえ、自分を追ってきた男二人のところに駆け寄るのはこわい。
それに、男たちに絡まれたからといって、こんな風に殴り倒してしまった少年は、一体何者なのか。
お礼を言わなければならない気はするが、そうするには、わけがわからなさすぎる。




「あっ……」
そうこう躊躇っているうちに、男たちから顔をあげた少年がこちらに顔を向けた。
再び目が合う。
「あの……」
離れた位置から、出た声は小さくて、少年に届いたどうかわからない。
「えっと、あの、あっ……」
何といっていいかわからないまま、言葉を探しているうちに、少年は顔を戻して、私に背を向けて歩き出した。
「あのっ」
今度は彼に届くくらいの大きさの声が出たが、少年は振り替えることなく歩いていってしまった。
「……」
少年はそのまま行ってしまった。
結局お礼どころかなにも言えず、私は少年を呼び止めようと、中途半端にあがっていた手を、やり場のないまま下ろした。

(誰だったんだろう……)
私は昨日、――定かではないが――私を助けてくれた少年のことを思いだしていた。
(お礼ぐらい言うべきだったな……)
あの時、恐怖と警戒心で、少年に近寄れなかったことが悔やまれる。
助けてもらったのだから、お礼を言うのが道理というものだろうに。
「ねえ聞いてる?」
「えっ?」
友人の声に私は我に帰った。
休み時間、私のところにおしゃべりにきていた友人は「も〜」といって唇を尖らせた。
「あっ、菅井先輩」
すると突然、友人が教室の入り口の方を指差して言った。
見ると、一人の女子生徒が、自身に気がついた周囲の生徒に優雅な微笑みを向けながら私たちの教室に入ってくるところであった。
この学校の生徒会長である、3年の菅井友香先輩だ。
すぐに、クラスメートたちが彼女の周りに集まり、教室の入り口付近に人だかりができた。
「私たちも行こう」
友人がそう言って、私たちもその人混みに参加した。
クラスメートの頭と頭の間から、菅井先輩の姿が垣間見える。

入学して間もない私たちでも、その存在は入学当初から知っていた。
入学式の際、新一年生を迎える挨拶で、生徒全員が彼女に目を奪われた。
菅井先輩を知らない者はこの学校にいない。彼女は人気者で、ほとんどの生徒を慕っている。私にとっても憧れの存在だ。
菅井友香生徒会長の容姿とその存在感は、一度見ただけで記憶されるほど、人の目と心を引き付けるものであった。
「やっぱりきれい……」
隣で友人が嘆息して言った。菅井先輩を一目見ようと背伸びしている。
菅井先輩は人混みの中心にいる他のクラスメートと何やら話していた。私たちはこの人混みの最も外側にいるから、会話に参加できない。その内容も、周囲の生徒の歓声のざわめきで聞こえなかった。
すると、菅井先輩と話していたクラスメートの一人が顔を人混みの外側に向けて、声を張った。
「ねえ、唯いる?」
0007名無しって、書けない?(茸)
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2017/03/22(水) 01:20:31.83ID:MYpnXBTid
欅坂×不良学園ドラマ

突然、なぜか自分の名前が呼ばれた。
きょとんとしていると、ぱっと人混みが道を開けるように私に向けて二つに別れた。
「えっ?」
「菅井先輩が呼んでるよ」
菅井先輩のそばにいたクラスメートはそう言って私に手招きした。
「私……?」
わけがわからないでいると、
「どうしたんだろう……でも唯、ほらっ」
と、隣にいた友人が私の背を押した。
「えっ……」
なんでかわからないまま、私は、きょろきょろと私を挟むクラスメートに目を右往左往させながら、菅井先輩の前まで歩み出る。

そうして私は菅井先輩と対面した。
清楚さを感じさせる艶やかでまっすぐ伸びた黒髪に、知性を感じさせる目元。
黒髪とは対照的に、顔や手、首もと、露出の少ないこの学校の制服でも覆うことのできない箇所から覗く肌は、絹のように白く、上品に微笑む口元は優雅さを湛えていた。
同じ制服を着ているはずなのに、菅井先輩だけ特別な感じが出ているぐらい、誰よりも制服が似合っていた。まるで彼女のためにデザインされたかのように、制服を着こなしている。
(すごい……皇族の人みたい……)
菅井先輩を間近で見て、私はそのオーラに圧倒された。
これはこの学校でよく知られたことであるが、菅井先輩は本物の「お嬢様」であるらしい。噂では財界のトップのご令嬢だとか。
気品あるその姿は、この学園の校風を体現している。まさにこの学園の象徴的な存在だ。


その菅井先輩が私に何の用だろう?
「あなたが、今泉唯さん?」
菅井先輩は、しっとりとした、でもよく通る声で、私に問いかけた。
「えっ、あ、はい……」
雲の上の存在である、あの生徒会長が、一生徒、それも一年生の私に一体なんのようだろう?
「放課後、生徒会室に来てくれる?」
菅井先輩は言った。
「えっ?」私は首を傾げた。
生徒会室?なんで私が?
私の疑問をよそに、菅井先輩は、
「放課後に迎えに来るから、待ってて」
そう手短に言うと、菅井先輩は優雅な微笑みを浮かべて、自分を取り囲む周りの生徒に軽く声をかけながら、教室のその外に出ていった。
いきなりのことに呆然としていた私は、その理由を聞くことすらできず、その場に残された。
「どうしたんだろう?」
友人が言う。
「うん……」
私もわけがわからなかった。
0008名無しって、書けない?(チベット自治区)
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2017/03/22(水) 02:14:49.99ID:AgCgy/aF0
続きが気になる
0010ハコオシ(茸)
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2017/03/22(水) 07:51:22.06ID:MYpnXBTid
欅坂×不良学園ドラマ 第三話

放課後、菅井先輩が再び私たちの教室にやって来て、私は彼女につれられて、生徒会室に向かっていた。
――あの一体なんの用だろう?
理由を訊ねてみても「いいから来て」と優雅な笑みではぐらかされて、私は言われるがまま、菅井先輩についていっていた。
生徒会室は、生徒たちが普段学校生活を送る教室が並ぶ校舎とは別の校舎の三階にあるらしい。
そのため、この校舎のなかには他の生徒の姿は見当たらず、私たちはしんと静まり返った廊下をこつこつと足音を立てながら歩いて、校舎の両端にある階段の一方を上っていた。
一階や二階には美術室や理科の実験室といった特定の授業でのみ使用する部屋が設けられていた。
その校舎の三階、階段を上りきり、廊下をちょうど真ん中まで進んだところに生徒会室はあった。
「どうぞ入って」
私たちが生徒会室の入り口の前に来ると、菅井先輩が入り口の脇にたって戸を開けてくれた。
「失礼します……」
生徒会の役員でもなんでもない、――というか、入学したばかりの一年生の私は、ひどく場違いな感じを覚えながら、おずおずと生徒会室に足を踏み入れた。
生徒会室は、外はまだ明るいというのになぜかカーテンが閉められていた。
外の日差しがカーテンを透過して暖色系の明かりとなって室内をぼんやりと照らしていた。
(誰かいる……)
室内を見渡すと、生徒会室の中央に並列して置かれた二つのソファの片方に座る人影が目に入った。
(えっ……!)
その人物の顔を認めたとき、私は驚きで目を見開いた。
(あの時の……!)
その人物――ソファにどっしりと深く腰かけて、生徒会室に入ってきた私たちに目を遣るその若い男は、先日、この学校の校舎のすぐ外で集団でたむろしていた不良少年たちの一人――私と目が合ったあの少年であった。
0011ハコオシ(茸)
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2017/03/22(水) 07:53:11.07ID:MYpnXBTid
欅坂×不良学園ドラマ

私は信じられなくて、その少年をもう一度よく見た。
先日と異なり、服装は学生服と見られる灰色を基調としたフォーマルな服で、それを崩すことなく、きちんと着ていた。
服装だけ見れば、別人のように思えるが、その顔は見間違えようもなかった。
長い前髪を向かって右上から片目が隠れるぐらいに斜めに流し、横の髪は耳が覗くようにかき揚げている。
学生にはそぐわない金髪に髪型、そして何より、その鋭い猫目型の双鉾は見間違えようがない。

間違いなく、あの時の不良少年だ。
「志田くん、この子でいいんだよね?」
後ろから発せられた声に私ははっと振り返った。
菅井先輩の方を振りかえると、いつのまにか生徒会室の戸は閉められていて、不透明なはめ殺しのガラスから差し込んだ光が、逆光となって菅井先輩の顔を陰らせていた。
その顔には、あの清廉な生徒会長らしからぬ、妖しい笑みが浮かんでいた。
「ああ」
また後ろ――今度は、少年の方から声が聞こえ、私はそちらを振り返る。
「あの……これは……?」
怪しい雰囲気を感じ、私は不安を覚えながら、菅井先輩とあの不良少年に交互に見ながら言った。
状況が理解できない。
なんで、女子高であるこの学校に、男子が――それもあの不良少年がいるのか?
「じゃあ、紹介するね」
そう言って菅井先輩は部屋真ん中に進み、ソファに座る不良少年を手で示した。
「こちらは、神楽坂高校の志田マナキくん」
志田と呼ばれた不良少年は、
厳めしい表情を動かずことなく、ずっとこちらを見ている。
「あの、ここ女子高なのになんで男の人が……?」
私は菅井先輩に対して言った。
「そうだよね、それも今から説明するから」菅井先輩は私の反応があらかじめ予見していたかのように余裕のある微笑みを見せた。「でも、まずは今泉さんをここに理由から説明するね」
菅井先輩が言う通り、確かにその疑問あった。
私は何も言わないまま、菅井先輩の言葉を待った。
すると菅井先輩は言った。

「今泉さんは、次の捧げ物に選ばれたの」
0012名無しって、書けない?(チベット自治区)
垢版 |
2017/03/22(水) 14:09:27.52ID:AgCgy/aF0
あげ
0013ハコオシ(茸)
垢版 |
2017/03/22(水) 19:47:05.48ID:MYpnXBTid
欅坂×不良学園ドラマ第四話

「……」
……捧げ物?……選ばれた?私?
「あの、それはどういう……」
「そうだよね。私もそうだった」菅井先輩はわかっているといわんばかりに手で私を制するしぐさをした。
「ところで、今泉さんはこの学校の平和はどうやって保たれていると思う?」
菅井先輩は突然、よくわからないことを口にした。
「えっ?」
学校の平和?不調和な言葉の組み合わせに、私には意味がわからなかった。
「この街にはいろんな人がいるよね」
理解できないことが積もっていくだけの私をよそに、菅井先輩は話し始めた。
「もちろん大半が普通の人だけれど、なかには悪い人や怖い人もいる。今泉さんも心当たりがあるんじゃない?」

菅井先輩は意味ありげに微笑んでみせた。先日の、校門にいた不良や昨日、私を追いかけてきた不良が脳裏によみがえる。
「たくさん人がいれば、それだけいろんなことが起こりうる。そんななかで、この学校の平和が保たれているのは、
――つまり、この学校の女の子たちが、怖い人に絡まれることもなく、変な人に変なことをされることもなく、毎日穏やかに学校生活を送ることが出来ているのはなんでだと思う?」
菅井先輩は首を少し傾げて、私に訊ねてきた。
「それは……普通に気を付けていれば……」
「学校のみんなも、そう思ってる。」
菅井先輩は、何も知らない子供に教え諭すような顔で言った。
「でも実際は違う。私たちが何気なく生活しているその陰で、実力をもって私たちを守ってくれている人たちがいるの」
菅井先輩はソファに座る不良少年にすっと目を配った。
「それがこの、志田マナキくんを始めとする、神楽坂高校の人たち。彼らが、この学校の女の子たちに変な虫が寄り付かないように守ってくれているの」
0014ハコオシ(茸)
垢版 |
2017/03/22(水) 19:48:01.54ID:MYpnXBTid
欅坂×不良学園ドラマ

「はあ……」私は曖昧に返した。
「少し前から、ストーカーとかドラッグが問題になっているのは知ってる?」
菅井先輩は突然、社会問題について口にした。
それぐらいのことなら、私も知っている。だが、そのことと菅井先輩が話していることはただちに結び付かなかった。菅井先輩は難しい話を説く教師のように、部屋を行ったり来たりしながら、話をしだした。
「社会には、女子高生のような、若くてか弱い女の子を付け狙う人や、ドラッグや不適切な行為といった、青少年の健全な成長を害する物事に若い子たちを関わらせる人がいる。若い子どもたち、特に女子高生を取り巻く環境は悪くなってきているの」
まだ話の全体像はつかめないが、私は口を挟みたくなった。
「でも警察とかに言えば……」
「警察は問題が起きてからでないと対応してくれないの」
菅井先輩は諦めの表情で首を振った。
「実際、この学校で生徒が事件に巻き込まれたことがあってね。でも警察が動き出してからではもう遅かった。その子は癒えることのない傷を負った」
菅井先輩は悲しげな様子でそう言った。
「問題が起きてからでは遅いの。被害者はずっと苦しみ続けることになる。でも、問題が起きる前では警察や大人は動いてくれない」
菅井先輩はそこで歩みを止めて私に顔を向けた。
「そこでこの学校は、彼ら、神楽坂高校と協定を結んだの」
0015名無しって、書けない?(茸)
垢版 |
2017/03/22(水) 19:51:37.62ID:MYpnXBTid
欅坂×不良学園ドラマ

「協定……?」
「そう、この二つの学校間での取り決め。内容は簡単に言って三つ」
菅井先輩は話の要点であることを示すように、人差し指を立ててみせた。
「まず第一に、神楽坂高校の生徒はみだりに我が校の生徒に接触しないこと」
二本目の指を立てる。
「次に、もし我が校の生徒が何者かによって危害を加えられたとき、またはそのおそれがあるとき、神楽坂高校がそれを取り除くこと。
例えば、彼らは、この学校の女子をつけるストーカーがいれば、そのストーカー懲らしめてくれる。
ほかにも、この地域の外部から、悪い人たち
――無差別に人に威嚇して絡んでくるような、柄の悪い人たちが入ってきたり、はびこらないようにこの地域をパトロールしたりしてくれているの」
話が少しずつ見えてきた。
菅井先輩の言っていることが本当だとして、要するに、この不良少年のいる学校にこの欅坂女子高等学校は用心棒を頼んでいるということだろうか。
「でも、なんでこんな人たちに頼むんですか?」
この不良少年には失礼だか――言われても仕方のない容貌だとも思うが――私は疑問を挟んだ。
「普通の学校の人では力にならないから。」
菅井先輩は、そんなの簡単なことだ、と言わんばかりにさらりと答えた。
「普通の学校の男子は模範的で軟弱だし、そもそも頼んだとして引き受けてくれないから。それに大人もあてにならないからね」
私の疑問を解消できたとみたのか、菅井先輩はここで歩みを止めて言った。
「そして三つ目が」
三本目の指を立てる。その目はどこかいたずらっぽく笑っているように見えた。
「その対価として、この学校から女子生徒を捧げること。その『捧げ物』に今泉さん、あなたが選ばれたの」
0016名無しって、書けない?(チベット自治区)
垢版 |
2017/03/22(水) 19:57:03.42ID:AgCgy/aF0
ずみこ捧げられてしまうの…?
0017名無しって、書けない?(チベット自治区)
垢版 |
2017/03/22(水) 20:00:30.09ID:K/Wb6hBn0
おもしろいけど小説(エロ無し)とかでスレ立てた方がよくない?
0018名無しって、書けない?(茸)
垢版 |
2017/03/22(水) 20:19:03.81ID:D7DsWCFUd
特に新しいニュースもないのに
本スレで無理やり話題にされすぎてもはや不快なメンバー

小林
上村
鈴本
原田

影山
東村

そして、アンチスレも滅多に立たない

逆に平手、齋藤、長濱、志田辺りは毎日の様に…あっ…(察し)
0019名無しって、書けない?(茸)
垢版 |
2017/03/22(水) 20:29:58.39ID:JzGKoafbd
特に新しいニュースもないのに
本スレ実況スレネタスレで無理やり話題にされすぎてもはや不快なメンバー

平手
齋藤
守屋
鈴本

柿崎
加藤

そして、アンチスレ乱立を嫌われていないメンヲタのせいに擦りつけ

平手は特に嫌われメンでアンチが毎日の様に…あっ…(察し)
0020ハコオシ(茸)
垢版 |
2017/03/22(水) 23:14:06.33ID:MYpnXBTid
18さんへ

ごめんなさい、ちょっとエロあるかも知れないです。
0021名無しって、書けない?(チベット自治区)
垢版 |
2017/03/23(木) 00:07:18.04ID:vIu/W0Wk0
>>20
いや全然いいですw
でもそれだったら現行の小説スレ(エロ可)でよくないですか?w
まあでもおもしろいのでいいです
あっちIPあるから書きづらい人も多いだろうし
ただこれだと感想が少ないのがもったいないなぁと思って
0022ハコオシ(茸)
垢版 |
2017/03/23(木) 00:35:26.86ID:9kQCplsQd
21さん
私はスレッドに書き込んだり、自分で建てたりしたのは今回が初めてなのですが、なにやら容量?というものがあるらしく、上記の書き込みのように一人でたくさんの量の書き込みをして、スペース(容量?)を使ってしまうのが申し訳なくて個別にスレッドを建てました。
アドバイスありがとうございます。
0023名無しって、書けない?(チベット自治区)
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2017/03/23(木) 00:53:48.88ID:vIu/W0Wk0
>>22
なるほど了解です!
ご丁寧にどうも
0024ハコオシ(茸)
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2017/03/24(金) 10:42:55.15ID:S0wGeDhyd
欅坂×不良学園 小説 五

「捧げ物ってなんですか……?それに、私が、って……?」
私は思わず訊ねた。
「この協定の条項に基づいてこの学校は、私たちを守るために汗と血を流してくれている彼らに、彼らの奉仕をする女の子を提供しているの」
「奉仕……?」
「そう。彼らを色々な面で支えるの」
「どうして私が……」
「志田くんたちが今泉さんのことを気に入ったの」菅井先輩は言った。
「この『捧げ物』を選ぶときは、神楽坂高校の人たちに、この学校の生徒を一通り見てから決めてもらうんだけど、この前、彼らが校門のところにいたのに気がついた?」
私は先日のことを思い出して合点がいった。
彼らはあの時、品定めをしていたということか。
菅井先輩は続ける。
「まあ、その前に一回写真でも見てもらってるんだけどね」
「写真……?」
「ほら、受験のときに提出するでしょ?」菅井先輩は軽い口調で、私に思い出させるように言った。
……受験票のことだろうか?
確かに受験の際は、本人確認のために自身の写真を学校に提出するが、そのことを言っているのだろうか?
――それらを彼らに見せた?そして、あの日……。
まず写真をこの不良少年らに見せて、さらにあの日、実際に生徒を見てもらい、この不良少年らは『捧げ物』とかいうものになる生徒を選んだというのか。
陰で行われていた訳のわからないやり取りに、頭がぼうっとした。
「ということだから、今泉さんには彼らのところに行ってもらうね」
話を総括するように菅井先輩は言った。
けれど、納得できるわけがない。
「そんな、無茶苦茶です!というか、『奉仕』ってなんなんですか!?」
私は一番気になっていたことを訊ねた。
「だから、いろんな面で支えるの」
「なんですか、いろんな面で、って!?」
そのあまりに抽象的な答えと、この成り行きの怪しさから、これにはなにか含みがあると疑念を持った私は、菅井先輩を問い詰めた。
「だから、彼らと一緒にいることで、精神的に支えたりだとか……ときには彼らを『慰め』たりだとか……」
「『慰める』……?」
私はその言葉に引っ掛かった。
「『慰める』っていうのはだから……、女性として、男性を、ってこと。……ちょっともう、言わせないでよ〜」
菅井先輩は恥ずかしそうに、一人勝手に笑いだして言った。
0025ハコオシ(茸)
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2017/03/24(金) 10:43:52.95ID:S0wGeDhyd
欅坂×不良学園 小説


――笑いごとじゃない!!
菅井先輩が言っているのは……それはつまり、肉体的な、『そういうこと』をするということも、はらんでいるということだ。
――要するにこの人は、奴隷のようなものを差し出すつもりだ。
それも、なぜか私を。
「すみません!失礼します!」
この場にいてはいけない。そう感じた私は、二人に構わず生徒会室の出口に向かった。
「っ!」
だが、戸を開けると、目の前に二人の男がそびえ立っていた。二人とも志田という少年と同じ学生服を着ている。
「ちょっと……!」
二人は無言のまま、体を張るように生徒会室に押し入ってきた。
行く手を阻まれる形となった私は、そのまま生徒会室のなかに押し戻されてしまう。
「お前に選択権はない」
それまで口を開かなかった志田という不良少年が、立ち上がって言った。
「一緒に来てもらうぞ」
有無を言わせない威圧感を持つ、その鋭い眼光に、私はなにも言葉を紡ぐことができなかった。
「そういうことだから、ね?」
菅井先輩が微笑を浮かべて言った。


彼らにされるがまま連れてこられたのは、街のなかに建つ、ある廃ビルだった。
外装は長い間雨風にさらされてか、色褪せ、塗装が剥げ、荒廃した感じになっている。
一回の入り口には「立ち入り禁止」の表示が――もしかしたら彼らが自分でしたのかもしれないが――なされていた。
0026ハコオシ(茸)
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2017/03/24(金) 13:38:37.68ID:S0wGeDhyd
欅坂×不良学園 小説 六

階段を登って二階のフロアに入ると、そこはこのビルの外観どおり、使われなくなって久しいような、埃っぽくて汚れた、薄暗い場所だった。
志田が先頭に立ち、私は彼と取り巻きの二人に前後挟まれる形で、フロアの入り口から中に進んでいった。
見ると左手のほうで、適当に調達されたような不揃いの椅子と丸い机で、トランプに興じている男たちがいる。
すると彼らは、私たち――というよりは、この不良集団のリーダーである志田に気がついたのか、
「志田さん、お疲れさまです!」
と、彼を見るや否や、手に持っていたカードを置いてその場で立ちあがり、志田に向かって頭を下げた。
「おう」
志田は無造作に片手をあげて彼らに応じた。頭をあげた男たちは、志田の後ろを歩く私に気がついたのか、珍しいものをみるかのような視線を向けてきた。
さらに奥へ進むと、今度は右手のほうで、二人の男が、互いに向き合って、格闘技らしきものの訓練をしていた。
「お疲れさまです!」
志田に気がついた彼らも、やはり先の男たち同様、志田に対して大きな声で挨拶をしてきた。

そうして私たちは、フロアのもっとも奥まで来た。
そこには王座よろしく、横長のソファが置かれており、その傍に、一人のすらりとした、まるで雑誌に載る男性モデルのような、スタイルのいい男が腕組みして立っていた。
「おかえり、マナキ」
私たちに気がついたその男は、顔を少しだけこちらに向けて、微笑みながら軽い会釈だけしてそう言った。
その態度は、姿勢を正して志田を迎えた他の男たちとは違って、志田との気が知れた仲を感じさせるものだった。
0027ハコオシ(茸)
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2017/03/24(金) 14:03:59.75ID:S0wGeDhyd
欅坂×不良学園 小説


「へえ、この子が」
少年はそう言いながら、私の方へ数歩近づくと、私を上から下まで眺て、「ふ〜ん」と納得したように頷いた。
(え……)
この人も志田たちの仲間なのだろうか?
その少年の容姿がはっきりと見えてきて、私は唖然とした。
女の私もはっとするぐらい綺麗な肌に、美しい曲線を描く輪郭。――不良のはずなのに――優しい目をしていて、微笑んでこちらを見てくるその姿は、不良少年らしからぬ、それどころか気品のある感じで、まるで貴公子のような印象を抱かせる美少年だった。
「この子が今回の捧げ物?」
私の目の前に立つその少年は、志田をちらりと見てそう言った。
「おう」
志田はそれだけ言うと、少年の前を通過して、どかっとソファに腰を下ろす。
そして、「みんなを集めてくれ」と少年に対して言った。
0028ハコオシ(茸)
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2017/03/26(日) 01:18:41.78ID:yalk8yTRd
欅坂×不良学園小説

「わかった」
少年は背を向けた。ここに入ってくるときに見かけた男たちを呼びにいくのだろう。
「ああ」
だが少年は、何かを思い出したかのようにこちらを振り返った。
「君、名前は?」
「え・・・・・・」
少年は私の方を見ている。
少年は幼い子供に名前を訊ねるかのように、「うん?」と優しく微笑みながら首を傾げた。
「今泉・・・・・・佑唯・・・・・・」
「僕は渡邉リサオ。よろしくね、佑唯」
渡邉と名乗った少年は、踵を返して歩き出し、少し行ったところで「みんな集まってくれ」と声を張り上げた。

渡邉を先頭に、ぞろぞろと他の不良少年たちが、志田のもとに集まってきた。
どの男も、厳つい顔に、仰々しさをも感じさせる柄の悪い服装をしていた。
集まった不良少年たちは、顔と体はあくまでこの集団のリーダーである志田に向けていたものの、目だけを部外者である私に向けてきた。
居場所のない私は、ソファに足を組んで座る志田のそばに、身を縮こませて立っているしかなかった
「欅坂から女が届いたぞ」
男たちの前に座っている志田が、彼らに向けて言った。
「きゃっ」
不意に腕を引っ張られ、私は後ろーーソファの方に倒れ込んでしまった。
志田が私の腕をつかんで引っ張ったのだ。体勢を崩した私は、不本意ながら、志田の体にもたれ掛かる形になってしまった。
「やっ」
私は体勢を建て直そうとしたが、その前に志田が私の腰に手を回してきて、私は志田の方に引き寄せられた。
「こいつが今回の捧げ物だ」
志田は男たちに言った。
頭が志田の胸元に寄っていた私の耳に、その声が大きく響いた。
0029名無しって、書けない?(pc?)
垢版 |
2017/03/26(日) 01:20:50.60ID:imfymM460
俺もこのスレみたいにト書きと台詞だけで徳山大五郎リメイクしてやろうと思ったが
たまたまイラスト描いてたからそれで続けてるよ
あート書きだとどんなに楽だろうなホント あっという間に終わるわ
0031ハコオシ(茸)
垢版 |
2017/03/26(日) 01:40:02.08ID:yalk8yTRd
29さん
ト書きって、
今泉「放して!」
みたいな感じのやつですか?
小説風の書き方は「○○は言った。」をどんだけ書かずにいけるかだと私は思ってます。
小説家の人ってすごいですよね。
0032名無しって、書けない?(茸)
垢版 |
2017/03/26(日) 01:41:58.26ID:yalk8yTRd
>30
だれが見てるかわからないけど、続けますね 笑
0033名無しって、書けない?(pc?)
垢版 |
2017/03/26(日) 08:46:51.98ID:imfymM460
>>31
ト書きは脚本における台詞以外の部分

全部映像化が前提だから小説の描写とは感情表現の可否に置いて若干異なる
0034ハコオシ(茸)
垢版 |
2017/03/26(日) 23:01:43.46ID:yalk8yTRd
31さん
なるほど!ありがとうございます。

欅坂×不良学園小説

「放してっ・・・・・・」
私は志田の体を両手で押したが、力が入りにくい体勢だったのと、片手なのに想像以上に強い力で抱え込まれていたために、身動きがとれなかった。
「名前は・・・・・・なんだっけか?」
女を侍らす暴君さながら、志田は不敵な笑みを浮かべながら、私を見下ろして言った。
私と志田の目が、至近距離で合う。
・・・・・・
さっき渡邉に向かって名乗ったのが聞こえたはずだし、それだけでなく、生徒会室で初めて会った時も、私の名前は話に出ていたはずだ。わざととぼけているのか、それとも本当に私の名前など関心がなかったのか、
真意はわからなかったが、なんだか私は、悔しい気持ちになった。
「今泉佑唯・・・・・・」
「だそうだ」
志田は他の男たちに目を向けて言った。男たちはにやにやしながら、こちらを見ている。
0035ハコオシ(茸)
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2017/03/26(日) 23:02:42.71ID:yalk8yTRd
欅坂×不良学園小説

ーー逃げなければ・・・・・・。
私は、私たちを囲む男たちの奥ーーこの階の入り口のほうを、志田たちに気づかれないように盗み見た。
隙を見て、出口に向かって走れば、ここから逃げられるかもしれない。でも今は数多くの人に囲まれており、注意も向けられている。
・・・・・・きっと、きっとチャンスはある。
「お前ら、こいつを好きにしていいぞ」
突然、志田は無造作に言い放った。
「えっ!」
一人頭を回していた私は不意を突かれて、慌てて私を抱えている志田を見上げた。
ーー待って、そんな・・・・・・。
逃げる間もなく、この男たちに乱暴されてしまうのだろうか・・・・・・?
あせる私を、志田は口の端をつり上げながら見下ろしている。
「・・・・・・冗談だ」
志田は動揺していた私をからかうように言った。
すると、回りの男たちが「はははははっ」と、一斉に下品な笑い声をあげた。
ーー!
私は頬の辺りがかあっと熱くなるのを感じた。
・・・・・・いいようにされてる。
私は悔しかった。でも、それ以上に、今の私にはこの状況を自分だけでどうにかする力がないことが今になってわかってきた。
「・・・・・・帰して」
不本意だったが、私はこの不良集団のリーダーに願い出た。
「あ?」私の声が届かなかったのか、志田は眉をピクリと上げた。
「帰して・・・・・・ください」
さっきよりも大きな声が出るように、私は力をこめた。
すると志田は二、三頷いた。
0036ハコオシ(茸)
垢版 |
2017/03/26(日) 23:04:53.29ID:yalk8yTRd
欅坂×不良学園小説

「・・・・・・今日はもう遅いからな」
「えっ」
ーー帰してくれるのだろうか。こんなにあっさりと。
半分意外だったその返答に、私はどこか拍子抜けした気持ちになった。
「だが、お前は明日から毎日、学校が終わったら、ここに来い」
志田は言った。
「毎日・・・・・・」
「当たり前だ。お前はもう俺たちのものなんだからな」
志田か鼻で笑っていった。
「当面は迎えをよこす。正門から出でこい。そこに目立つ奴を置いておくから、そいつのあとを付いていけ。他の女たちの目に付かないようにしてやる」
志田は私に指示を出してきた。
「逃げようとなんて思うなよ。まあ、お前がこの街から出ていくなら追いはしないが」
志田は冷たく告げた。
これからどうなるのだろう。私はこれからのことを思ったが、全く見えてこなかった。
頭がぼんやりする。私は、胸に黒い靄が広がったような、気分の悪さを覚えた。

不良少年たちに解放されたあと、私は寮に帰って、一人、部屋のかなで足を抱えて座っていた。
頭が重くて、勝手に俯いた姿勢になる。顔をあげる気にならない。
明日、またあの人たちが来る・・・・・・。
どうしたらいいのだろう。今日は何もなかったが、明日は何をされるかわからない。
これからどうなるのだろう・・・・・・?
暴力を振るわれるのだろうか?いいように扱われるのであろうか?
ーー逃げたい。
でもどこに?ずっと、ここにいる?
警察に相談する?なんと言って?「悪い人たちに付きまとわれているんです」と・・・・・・?
警察はまともに取り合ってくれるだろうか?まだ犯罪とか事件が起きたわけではないのに・・・・・・。いや、でもそうだ、そうしよう。
あした、あの人たちのアジトで、こっそり警察に連絡して、その場を押さえてもらえれば、なんとかなるかもしれない。
ーー絶対にあの人たちの好きなようにはならない。
0037ハコオシ(茸)
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2017/03/26(日) 23:06:00.14ID:yalk8yTRd
欅坂×不良学園小説

次の日、学校が終わって、私は
ーー大丈夫。
このまま泣き寝入りはしない。あの不良少年たちと私は戦う。
私は、自分に言い聞かせた。
校門を出てから、私は周囲を見渡した。
昨日、志田が言っていたことによると、なにやら「目立つ奴」とやらが、私を迎えに来ているらしい。
すると、少し離れたところの電柱のそばに、半身が隠れて見えるかたちで、周囲ーー下校する風紀正しい女子学生やきれいに整備された学校前の通りーーから浮いている、一人の男が目に入った。
見ると確かに、その人物はやたら目立ってーー悪目立ちしていた。
ピンクを基調に、いろんな色のまだら模様が入った派手なパーカーを来て、しかもフードを頭に目深に被せている。
見るからに怪しい不良少年だ。
その私がその姿に気がつくと、あちらも気がついたのか、しばらく私の方に顔を向けたのち、ついてこい、と言わんばかりに振りかえって歩き出した。
あの不良少年が「迎え」の役か。私は、少年を見失わないように歩き出す。
昨日の志田の指示の意味がわかってきた。確かにあんな不良少年と一緒にいたら、周囲の生徒に変に思われてしまうだろう。
「捧げ物」の存在は、昨日の菅井先輩の口ぶりだと、一部の人ーーというか当事者しか知らないと思われる。
志田は、表面的には、普通の生徒と変わらない体裁を取り繕ってくれているらしい。
ーーそんなの、いらない。
私を好き勝手扱おうとしているくせに、変なところで配慮をする。
それが私には腹立たしく思えてきた。

ド派手パーカー男は、少し歩いては私の方を振り替える、を繰り返し、私たちは、志田たちのアジトのビルにたどり着いた。
パーカー男はここで入り口を少し入ったところで立ち止まっていて、あとを付いてきた私が今度は先を歩く形で、私たちは階段を上っていった。
0038名無しって、書けない?(庭)
垢版 |
2017/03/26(日) 23:18:36.83ID:bJ63ettDa
よんでるよー
面白い!
0039名無しって、書けない?(茸)
垢版 |
2017/03/26(日) 23:50:14.07ID:yalk8yTRd
38 さん
ありがとうございます!その一言で続けられます!!
四月から仕事に就くけど、1日一時間でいいから、進めていきたい・・・!
0040名無しって、書けない?(庭)
垢版 |
2017/03/27(月) 00:30:51.23ID:0EYLgdAda
>>39
がんばれ!
0041ハコオシ(茸)
垢版 |
2017/03/27(月) 00:59:00.36ID:X7KyZ7D+d
急いで書いてるから、なんか流れが変・・・
でももうすぐ、ずっとやりたかった戦闘シーンです!

欅坂×不良学園 小説
「逃げずに来たな」
不良少年たちのアジトに入ると、不良集団の長である志田マナキが、今日はソファに座るのでではなく、フロアの中央あたりに立っていた。
私の姿を認めた志田は、満足そうな笑みを浮かべている。
「さて、お前をどうするかな・・・・・・」
志田はいきなり不穏なことを言ってきた。
「待ってください。その前にいろいろ聞きたいことがあります」
私は志田に向かって言った。
「なに?」志田は少し険しい顔をした。
「あなたたちはここで、毎日何やってるんですか?」
私は志田に質問した。怯んだ態度は見せたくない。
正直、時間稼ぎの狙いもあった。話で長引かせれば難を逃れることができるかもしれない。
限界がきたら、そのときは、なにか理由をつくって、一人になって警察に通報できる状況を作らなければ・・・・・・。
「あなたたちのことを知らないと、・・・・・・本当に『そういうこと』をするとして、私納得できません」
私は下に見られないように、気持ちを強くもって質問した。
すると志田は、確かにそうか、というように少しうなずいて口を開いた。
「まあ、昨日、お前たちの生徒会長が言っていた通りだが、俺たちはこの街に俺たち以外のやつらがでかい顔をしないように、この街を仕切っている」
意外にも志田は、私の質問に対して、丁寧に説明をし始めた。
もしかしたら、この少年には、不良としての顔の他に、集団のリーダーとしてしっかりした側面も持ち合わせているのかもしれない。
ーー隙をみて警察に通報しなくても、話せばわかってくれるかも。
私の胸に、少し期待が芽生えた。
菅井生徒会長はあんなことーー彼らを体で慰めるなんてことーー
を言っていたけれど、話次第では、なんとか回避できるのではないか?
彼らはーー少なくともこの少年は、理性をもっているように思えなくもない。
0042ハコオシ(茸)
垢版 |
2017/03/27(月) 01:00:32.57ID:X7KyZ7D+d
欅坂×不良学園小説


「この街に変なやつらが入り込んでないか見て回ったり、あとは・・・・・・これはまだお前にはいえないな」
志田は言い渋った。
菅井先輩が言っていたことを、この不良少年たちは実際ちゃんとやっているらしい。
志田の話を聞いていて、私はこの不良な見た目とは反する、彼らの律儀な一面を意外に思った。
「・・・・・・だが、勢力については教えてもいいだろう」
だがここで、私は志田の話を聞く一方で、志田の後ろから志田に話しかけたそうにしているメンバーの一人に気がついた。
「隣街には、俺たちの縄張りを狙っている奴らがいて・・・・・・」
後ろの男にまだ気がついていない志田は、話し続ける
「マナキさん・・・・・・マナキさん!」
男は志田の後ろから、はじめは小声で呼び掛けたが、志田がすぐ振り返らないので、次に大きな声で彼を呼んだ。
「・・・・・・なんだ?」話の腰を折られた志田が、大声を出すな、といわんばかりの顔で、男の方を振り返った。
「西のアジトの様子が変です・・・・・・」
男は緊迫した顔で、小さく言った
「何・・・・・・?」
男は志田に、持っていた携帯電話を渡した。すぐさま志田がそれを耳に当て、そちらに集中した。
「どうした?」志田は電話に向かって呼び掛ける。
電話の内容はわからないが、何やら怪しい空気になってきた。
「どうした?何があった・・・・・・?何、守屋が!?全員いるのか!!」
徐々に志田の声が大きくなる。
そのいつもと違う様子に気がついたのか、他のメンバーが志田のところにまばらに集まってきた。
「おい・・・・・・おい!」
志田が携帯に向かって大声を出した。そして、通話が途切れたのか、携帯から耳を離し、それを見つめる。
「どうかしたの?」
渡邉が志田に問いかけた。
すると志田は、真剣な表情で言った。
「西のアジトが守屋に襲われた。全員揃っているらしい」
「えっ」
普段柔らかい表情を見せる渡邉も、険しい表情になった。
0043ハコオシ(茸)
垢版 |
2017/03/27(月) 01:02:09.02ID:X7KyZ7D+d
今日は以上です。
おやすみなさい!
0044名無しって、書けない?(庭)
垢版 |
2017/03/27(月) 02:22:55.44ID:8WbAPUN0a
>>43
続き楽しみにしてます
0045ハコオシ(茸)
垢版 |
2017/03/27(月) 11:37:14.90ID:X7KyZ7D+d
欅坂×不良学園小説

「他の奴らとは繋がるのか、掛けてみろ」
志田が、さっき電話を渡してきたメンバーに向かって、持っていた彼の携帯を投げ渡して言った。
「・・・・・・繋がりません」
そのメンバーは自分の携帯を操作して、耳に当てたあと、しばらくしてそう言った。
「そうか」志田はそう呟くと 、
「みんな聞け」と他の不良少年たちに向けて言った。
他の男たちーーこの集団のメンバーはすでに志田のまわりに集まってきていた。
「守屋たちが西のアジトを襲ってきた」
志田は真っ直ぐした眼で、皆に向かって言う。
「これから助けに向かう。全員ついてこい」
「おう!」
男たちが揃って声をあげた。
ほかの不良少年たちは緊張が走った真剣な顔をしていたが、どの目も勇ましい眼光を映していた。
「待って」
全体の士気が高まり、いざ行こうと少年たちが一歩歩き出したとき、渡邉が突然声をあげた。
「どうした?」志田が彼の方を振り向いて言う。
考えているように視線を下に下げていた渡邉が、志田に向けて顔をあげた。
「罠かもしれない」
「なんだと?」
志田が訊ねる。
「西のアジトは、小さくて何もないところだ。そんなところを守屋が全員で襲うなんて考えられない」渡邉は言った。
「小さいところから潰したかっただけじゃないのか?」
志田が反論する。
「そうかもしれないけど、奴らには頭の切れる米谷もいる・・・・・・なにかあるかもしれない」
ところどころ、私の知れない情報が話に入っていたが、私にも、緊急事態ーーたぶん、彼らと敵対する誰かが、彼らのアジトを襲っているのだーーが起きているとわかった。
「例えば?」
志田が渡邉に問う。
「例えば・・・・・・西のアジトに向かって藻抜けの空になったここを襲うとか、ここにはアレがあるし・・・・・・」
「なるほど・・・・・・」
志田が顎に手を当てて、考える仕草を見せた。
『アレ』がなんなのか私は気になったが、質問できる状況ではない。
「だが、助けにいかないわけにはいかない」
志田が口を開いた。
0046ハコオシ(茸)
垢版 |
2017/03/27(月) 11:39:45.99ID:X7KyZ7D+d
欅坂×不良学園小説


「敵がここを狙うなら、西のアジトからここに動いてくるはずだ」
志田は窓の方に眼を向けて続ける。
「もちろんすべて潰せる訳じゃないが、手分けして別々の道から、西のアジトに向かう。守屋がここに向かっているなら、どこかで鉢合わせるはずだ」
志田は仲間のほうへ顔を戻した。
「3,4人に分かれてそれぞれ、西のアジトに向かう道を進め。
守屋を見つけたら、戦わず連絡しろ。ここに集まってから、奴らを迎え撃つ」
志田が素早く指示を出す。
志田のことが見違えて見えた。
これまで私が見てきた、半笑いを浮かべて人を見下すような顔は消え去り、迅速に明確な指示をだすその威厳にみちた堂々とした姿は、リーダーとして集団を率いる者のそれだった。
「俺は最短経路で助けに向かう。井口、齊藤、ついてこい」
志田がメンバーに向けて言うと、その中の二人の不良少年が頷いた。
「リサオは、他の奴らを分けて、考えられるルートを当たれ」
「わかった」
渡邉が意を得たように頷いた。微笑んで志田を見るその顔に、彼に対する信頼や、誇らしげな気持ちが私には感じられた。
「織田!」志田が声を張り上げた。
メンバーの中の一人がびくりと反応し、「な、なんだ?」と答えた。
見るとあの、今日私をここにつれてきた、派手なピンクのパーカーをきた少年であった。
「お前はここで留守を守れ」
志田はその少年に指示を出した。
「数人をここに残しておく。お前は残ってここを守れ。
敵が来ても戦うんじゃないぞ。立て籠って俺たちが戻ってくるまで待て。わかったか!」
織田と呼ばれた少年は、「お、おう」と、すこし情けなく見える慌てた様子で頷いた。
「1分で出るぞ」
志田がそういうと、他のメンバーが弾けるように動き出した。
指示を受けていないメンバーが渡邉のもとに集まる。
先程、志田に言われた通り、渡邉が指示を出しているのだろう。
織田のところにも数人がなにやら駆け寄り、言葉を交わしている。
辺りは騒々しさに包まれた。
「おい」
「えっ」
気がつくと、志田が私のところに来ていた。
「急にこんなことになってしまったが・・・・・・お前のことは・・・・・・まあ、帰ってからだ」
その顔はすこし申し訳なさそうにしているように見えた。
「別に」
私は、短く返した。なにか大変なことが起きているようだが、私はあくまで『捧げ物』ーー彼らにいいように扱われる存在なのだ。
・・・・・・彼らのことを気にかける必要はない。まして、心配なんて。
「お前はここにいろ。外に出るなよ」
「・・・・・・わかった」
私が一応そう返すと、志田は「そうか」と小さく言って、私のところを離れていった。
その表情に、私を気遣ってくれているのが感じられて、不良少年のその矛盾した優しさに、私は変な気持ちになった。

「行くぞ!」
志田の一声と共に少年たちが出口に向かって走り出した。
0047ハコオシ(茸)
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2017/03/27(月) 12:08:07.61ID:X7KyZ7D+d
欅坂×不良学園小説

・・・・・・僕の考えは間違っていなかっただろうか?
ーー僕の考えが正しければーー守屋が進んでくる可能性がある道のひとつを走りながら、先程のやり取りを振り返る。
ーー間違えていたら。
いや、例え守屋にその狙いがなくても、この選択はそこまで大事にはならないはずだ。進むルートは違うが、結局みんな西のアジトに集結する。そこで守屋を叩けばいいだけだ。
「ーーさん!渡邉さん!」
仲間の声で我に返った。
「なに、加藤?」
呼んできたメンバーに問いかける。
「あいつら・・・・・・本当に来ますかね」
加藤も気にかかっているようだった。道路を全速力で並走しながら、僕は加藤に返した。
「僕の考えが外れてたんなら、それは、それでいい。みんなで守屋を潰す」
「・・・・・・そうですね!」
加藤は晴れた表情で頷いた。
メンバーと共に街を駆け抜ける。
街の風景が次から次へと前から後ろへ流れていく。
ーー!
僕は急制動をかけて、脚を止めた。
・・・・・・なにか今・・・・・・。
視界の端に、何かの影が映った気がする。
「どうしたんですか!」
後ろで加藤の声がする。
しかし、彼の方を振り返らずに、今通過したばかりの後ろの街並みに目を向ける。
開けた幅のある道に、並ぶ店。行き交う人。雑多におかれた自転車。
・・・・・・気のせいか。
「どうしたんですか」
加藤が僕のところまで戻ってきた。
ぐずぐずしている暇はない。気のせいかもしれないことを気にしている時間はない。
顔を前に戻そうとしたそのとき、視界の端でなにか動いた。
人だ・・・・・・その黒い影に目を凝らす。
ーーあれは・・・・・・。
「加藤!お前はそのまま進んで、マナキと合流しろ!」
僕は加藤の方を振り返り指示を出した。
「えっ!」
彼は驚いた顔で呆然としているが、説明している暇はない。
ーー戻らなければ。
直感がそう告げていた。
僕は今来た道を全速力で戻り始めた。
0048ハコオシ(茸)
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2017/03/27(月) 12:32:26.83ID:X7KyZ7D+d
欅坂×不良学園小説

彼らのアジトはがらんとしていた。
たくさんいた不良少年はほとんど出ていってしまい、あとには織田と数人の留守番メンバー、そして私が残るだけだ。
「うろちょろするなよ」
手持ちぶさたで、あてもなく歩き回って、そこらじゅうを見ていた私に織田が近づいて言った。
留守を任された彼は、なにやらメンバーに指示を出し、窓から外を見張らせたり、一階にいって誰か来ないか警戒させたりさせていた。
当然私にはやることはなく、ひとりポツンとしている。
「だって・・・・・・というか、汚いね、ここ」
男ばかりだからか、掃除がされている様子はない。そこらじゅうに埃がつもり、小さな塵が地面をおおっている。
「うるせえな」
パーカー少年が口を尖らせた。
「というか、大丈夫なの?」
私は織田に問う。
「なにが?」織田が訊きかえす。
「だから留守番。ちゃんと守れるの?」
状況はすこしだがわかっている。要するに、敵対する誰かーーほかの不良少年と、いまから喧嘩になるかもしれないということだろう。
「うるせえよ」
織田がムッとした顔で、また同じような返事をした。
話してみると、ーーというより初めて彼を見たたときからーーなんというか、彼には怖いという感じは覚えなかった。
やはりそのパーカーのせいだろうか、奇異な感じは確かにする。でもそれは怖いという感じではない。
そして実際話してみても、やはり感じた通りだった。
見た目とは裏腹に、人当たりがいい感じだ。今だってあっちから話しかけてきたし。
「織田くんっていうんだよね?」
私が改めて名前を訊くと、織田は「ああ」と頷いた。
「私は今泉佑唯」
「・・・・・・知ってるよ」
織田はぶっきらぼうに答えた。
「そう?よろしく・・・・・・って感じじゃないか。私、あなたたちに監禁されているも同然だし」
私がそういうと、織田は微妙な顔をした。
たぶん、私は状況についていけてないのだと思う。
なんだっけ、こういう心理。誘拐犯とかに親近感覚えちゃうやつ・・・・・・。
私がぼうっとそんなことを思っていると、
「織田さん!」
窓のそばにいたメンバーが突然声をあげた。
0049名無しって、書けない?(滋賀県)
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2017/03/27(月) 12:52:12.59ID:/yxjmgiw0
「なんで働かないといけないんですか?」と聞いた学生への、とある経営者の回答。
http://http://etbo.s-hattori.jp/1703.html
0050ハコオシ(茸)
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2017/03/27(月) 12:58:15.07ID:X7KyZ7D+d
なんか、人物どうしの心理的距離感の近づきかたが、不自然にはやい…

欅坂×不良学園小説

「なんだ!」
織田が窓から下を見張っていたメンバーに顔を向ける。
「なんか今、誰か一人ビルに入ってきたような!」
「なにっ!」
そのメンバーはそう抽象的に報告した。
「守屋か!」
「いや、なんか一人、ちらっとビルに近づいてきたような」
織田が走って窓に駆け寄り、下を覗き込む。
「どういうことだ!?」
「ですから、守屋たちじゃなくて、なんか一人だけ、ここに入ってきたやつがいたような」
聞いててよくわからない報告だ。
「ちゃんと見てたのか!?」
織田が曖昧な報告をしたそのメンバーに問いただすも、
「一瞬だったんです!しかも壁に張り付くように動いて・・・・・」と彼はやはり、はっきりしない返事をした。
確かに上階から見下ろしたのでは、建物の真下の部分は死角になって見えずらいが・・・・・・。
何者かに侵入を許したのだろうか。
・・・・・・でも一人?
と私は思う。
志田の口ぶりでは敵の不良たちは複数人であるかのようだったが・・・・・・。
「近くで見張らせてるやつがいただろう!そいつは!?」
そう言って織田は、外で見張らせているらしいほかのメンバーに連絡をとるように、その男に言った。
すると男は自分の携帯を耳に当てたあと、「繋がりません・・・・・・」と言った。
「なに・・・・・・?」
織田が険しい顔をする。見張りをしていたメンバーと連絡が繋がらないなんて、なにか起きたのかもしれない。
雲行きが怪しい。
「どうしたの?」
いてもたってもいられなくて、私は織田のところに駆け寄った。
「お前には関係ない!」織田が顔だけ向けてそう返す

そのときだった。
どん。
「?」
「なんだ・・・・・・?」
今なにか、下の方で物音がしたような気がした。
織田も気がついたのか、下の階につながる階段がある、このフロアの入り口の方を向く。
「いまなにか聞こえ・・・・・・」
私がそう言い終わらないうちに、
ガアン!
大きな音を立てて、入り口のドアが勢いよく開いた。
0051ハコオシ(茸)
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2017/03/27(月) 13:20:29.16ID:X7KyZ7D+d
欅坂×不良学園小説

開いたドアに、ひとつの人影があった。
入り口付近は物陰で、その顔はここからでは見えない。
「なんだ・・・・・・」
織田が声を漏らした。彼も異変を感じ取っているようだ。
こちらの明るいところにその人影が歩みを進めてきて、次第にその顔が見えてきた。
その人影は、一人の少年のものであった。
ーーあの少年は・・・・・・!
「なんだてめえは!」
「あっ、おい!」
窓の見張りをしていたメンバーが、突如入ってきたその少年に向かって駆け出した。
織田の制止に構わず、そのメンバーは少年に向かって突進する。
誰なのかちゃんと識別したのかわからないぐらい性急な反応で、男は少年に向かっていった。
たが、その反応は、明らかに味方に対してするものではない。
ーー敵、なのだろうか?
「あっ」
血気のはやったメンバーの男は、少年に殴りかかっていった。
だが拳が少年に向かって突きだされた瞬間、少年はメンバーの男に巻き付くような動きを見せると、どうやったのか、次の瞬間、メンバーの男が投げ飛ばされていたのだ。
瞬く間のことであった。
ガアン!
投げ飛ばされ、壁にぶつかったメンバーの体が大きな音を立てて壁からずり落ちる。
メンバーの男は、立ち上がらなかった。
少年ーー私が街で男たちに追われたとき、その人たちを撃退してくれた、あの少年はなにもなかったかのような様子で、こちらにゆっくりと近づいてくる。
黒い髪に白い肌、男にしては細すぎるぐらい華奢な体。
そしてあの時見せたのと同じ、だたならぬ凶悪さを感じさせる、陰のある眼つき。
0052ハコオシ(茸)
垢版 |
2017/03/27(月) 13:25:15.71ID:X7KyZ7D+d
欅坂×不良学園小説


「・・・・・・平手!」
少年の姿を見て、織田が驚きの声をだした。
なにやら、あの少年のことを知っているような反応だ。
「お前・・・・・・どういうつもりだ」
織田が少年に対し、低いトーンで問いかける。
だが、少年はなにも言わず、無表情のままこちらに向かって進んできた。
少年がどういうつもりなのか、どういう立場なのか、全くわからないが、明らかに彼のとっている行動は敵対的なものだった。
「おい・・・・・・おい!」
織田が大声で呼び掛けるも、少年は反応しない。
「お前・・・・・・」そうポツリと一人ごちると、織田は私をかばうように私の前に出て、警戒している足取りでゆっくりと少年の方に進んでいった。
「どういうつもりだ、答えろ。でないと・・・・・・」
攻撃するつもりなのだろう。
最後まで言わなかったが、織田は警告を発した。
しかし、平手と織田が口にした少年は、やはり応えない。
二人の距離が詰まる。
「ーーっ!」
突然、少年が織田に向かって、突進していった。
素早く攻撃ーー蹴りが繰り出されたのが見えた。
「てめえっ!」
織田は、とっさにそれを回避していた。一旦距離を空け、突如攻撃を仕掛けてきた少年を注視する。
「・・・・・・やるんだな」
問答無用の攻撃に、会話の余地はないと踏んだのか、織田は両拳を胸の前に構えて、臨戦体勢をとった。
ーーなにこれ・・・・・・?
全く状況がつかめない。
「ーーふん!」
すると今度は、織田から仕掛けていくのが目に入った。
右手、左手の突き、そして前に突き出す蹴り技。
どの攻撃も、無駄のないように見える素早いものだった。
ーー強い。
あの派手なパーカーの第一印象で、そういうイメージは全くなかったが、この少年は意外にも実力のあるメンバーなのかもしれない。そういえば、志田に留守を直接任命されたのも、この少年であった。
・・・・・・でも。
織田の攻撃はどれも、少年にかわされてしまっていた。
0053ハコオシ(茸)
垢版 |
2017/03/27(月) 13:42:50.50ID:X7KyZ7D+d
戦闘シーンは不協和音をBGMにして、シーンを想像して頂けると、お楽しみ頂けるのではないかと思います。
ドラマでは山場で主題歌が流れるでしょ。あの感じです。
0054名無しって、書けない?(catv?)
垢版 |
2017/03/27(月) 17:56:03.75ID:sgSiS1Wm0
知的であるかどうかは、五つの態度でわかる。
https://t.co/L9NDQ9Y06X
0055ハコオシ(茸)
垢版 |
2017/03/27(月) 19:32:25.61ID:mYHcoPaWd
欅坂×不良学園小説

「ふん!ーーっぐ!」
自身の攻撃の合間合間で、少年の小さく鋭い攻撃が、度々織田にヒットしているのが見えた。
一方で、織田はまだ一度も有効打を少年に与えられていない。
「このおっ!」
熱くなったのか、織田が気合いの声をあげて、振りかぶった動きに乗せた、右の突きを繰り出す。
しかし、それはーー敵を仕留めようと昂ったためかーー私の目でもわかるぐらい、大きな動作の攻撃ーー隙のある大技だった。
「う”っ」
少年は、半身を外に開き、体を斜めにしながら前に滑り込むような動きで、織田の拳をかわすと同時に自身の右の突きを織田の体に突き刺していた。
「ぅ・・・・・・」
攻撃が深く入ったのか、織田がその場に倒れた。
苦痛に悶えるように、体を丸めている。
「・・・・・・」
助けにいかなければ・・・・・・でも・・・・・・。
体が動かない。
ーー誰か。
他に仲間のメンバーはいないのだろうか。回りを見渡すも、ここにはもう他に誰もいなかった。
「あっ」
少年は、初めて会ったとき、倒した男たちにそうしていたように、しばらく床に倒れた織田を首をかくんと折って見下ろしていたが、織田が立ち上がれないことを認めたのか、顔をあげて、こちらの方を向いた。
鬱蒼とした長めの前髪が乱れて、その目元に被っている。
しかし、その隙間から黒く光る眼が覗いて見えた。
ーー!
初めて会ったときのように、私はその眼光に動けなくなった。
少年はこちらに体を向け、歩き出した。
ーー近づいてくる・・・・・・。
0056ハコオシ(茸)
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2017/03/27(月) 19:40:33.09ID:mYHcoPaWd
欅坂×不良学園小説

逃げなければ・・・・・・でも足が動かない。
・・・・・。
そうしている間に、少年は目の前までやって来た。
手を伸ばせば届く距離に少年は立っている。
その眼が私を見ているのが、はっきりとわかった。
「・・・・・・」
「ねえ」
怖いはずなのに、口が勝手に喋りはじめていた。
「私たち、一回会ったことあるよね?ほら、前、街で。キミ、あの時の子だよね?」
少年は何も言わず、それどころか無表情のまま、私を見ている。
「覚えてない?ほら、えっと、なんていうか、私が変な人たちに追われているとき」
自分でも変な内容の話を変に明るいトーンで話しているのがわかった。
「あのときーー」
「来い」
「えっ?」
少年が今なにかポツリと言った。
「今なんてーー」
私が聞き返そうとしたときだった。

「ーーおおっ」
「っ!」
視界の左前から、ピンクの残影が見えたかと思うと、突然目の前にいた少年が、右のほうへ倒れていった。
どさっ、と音を立てて、二つの影が地面に倒れる。
見ると、織田が少年に対して、タックルを当てたのだった。
織田は辛そうな表情を浮かべながら起き上がった。
少年も立ち上がる。その表情から判断するに、ダメージを受けた様子はない。
むしろ、つまらないものを見るような目を織田に向けていた。
「志田さんに・・・・・・留守任されてんだ・・・・・・このまま・・・・・・やられるかよ・・・・・・」
立ち上がった織田が絶え絶えの呼吸で、そう発した。
しかし、その眼は虚ろで、意識が朦朧になっているように見える。
「あっ!」
少年が織田に向かっていった。
そして、一足前に踏み出すと、
脚を横から、織田の頭に向けて蹴りあげた。
ーー!
思わず私は目を瞑ってしまった。
恐る恐る目を開けると、まだ、織田はそこに立っていた。
顔の横にあげた左手で、少年の蹴りを、寸前のところで防いでいたのだ。
「ーーだあっ!」
織田は、手のひらを外に返すと、その平手の足首をつかみ、投げ捨てるように、大きく平手の脚を外に払った。
一瞬、平手の体勢が崩れる。
「お”おっ」
その一瞬のうちに、織田はばっと両手を前に構えると、再び平手に打ちかかっていった。
「ふん!ふっ、ふっ!だあっ!」
絞り出すような気炎をあげて、織田が連撃を繰り出した。
その左右の拳は、立て続けに平手の顔面をとらえた。
0057名無しって、書けない?(風の楽園)
垢版 |
2017/03/28(火) 14:37:53.03ID:fH5VnM4h0
なかなか上手いから会社員にならずとも
小説家になったらいいのではw
少なくともライトノベルぐらいは書けそう

(と無茶苦茶無責任なことを言ってみるwww)
0058ハコオシ(茸)
垢版 |
2017/03/29(水) 00:19:15.24ID:ZuvoFnkzd
欅坂×不良学園小説

「っ!」
少年は後ろによろめいた。
しかし、後ろに踏み出した足で踏ん張り、倒れるまでには至らない。
「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・」
渾身の攻撃だったのか、織田の攻撃はその四発で終わっていた。
両手を構えたまま、苦痛がにじんでいる険しい表情で少年の様子を伺っている。
顔面を殴られて、横に顔を向ける状態になった少年は、ゆっくりと首をこちらに回してきた。
ーー!
横目で睨むその眼は、より一層凶悪さが増して見えた。
「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・」
織田は構えを崩すことなく立っているが、自分からは仕掛けない。相当、疲労とダメージが蓄積しているように見える。
スッ・・・・・・。
少年が体勢を整えた。軽く開いた両手を胸の前に上げる。
少年と織田が、再び対峙した。
・・・・・・。
しん、とした静かな時間ーー長いのか短いのかわからない緊迫した時間が流れる。
「っ!」
息を吐く音が微かに聞こえたのと同時に、織田が少年に向かって一足で飛び込んでいった。
織田の腕が少年に向かってまっすぐ伸びていく。
そしてその拳が、そのまま少年に届・・・・・・
ーー!
その瞬間、少年はわずかに斜めに踏み出し、織田の拳の線から身を外すと、左手を織田の左脇の下から差し込んで、右の肩口へと巻き付けるように掛けた。さらに左足を織田の足の後ろに回して引っ掛ける。
そして、掛けた足を支点にして、なぎ倒すような動きで、織田を地面に叩きつけた。
「ーーかはっ」
どすん、と鈍い音がした。
「・・・・・・」
床に背中から叩きつけられた織田は動かない。
「ーー大丈夫!!」
危険な予感がした。これはもう不良少年同士の喧嘩の次元じゃない。
織田の命の危険を感じて、私は織田のもとに駆け寄った。
すぐそばに少年が立っていることも忘れて、織田の顔を覗きこむ。
0059ハコオシ(茸)
垢版 |
2017/03/29(水) 00:25:03.80ID:ZuvoFnkzd
57さん
ありがとー!ホントにありがとうございます。
一言リアクションを頂けるだけでモチベーションになりますね。
副業作家になるのが夢です。
なんとか書き続けたい。終わり方は見えてるけど
・・・。
メンバー全員の総力戦になるまで・・・。
0060名無しって、書けない?(dion軍)
垢版 |
2017/03/29(水) 00:26:46.71ID:ug/9S5lS0
更新待ってた!なかなか面白い!
0061ハコオシ(茸)
垢版 |
2017/03/29(水) 00:30:54.51ID:ZuvoFnkzd
60
ありがとうございます。
でも明日は用事があって・・・
今日はもう更新できません。
明日の、またこれぐらいの時間でしょうか・・・
0062名無しって、書けない?(地震なし)
垢版 |
2017/03/29(水) 07:58:48.63ID:NeycbRR00
待ってます
0063名無しって、書けない?(新疆ウイグル自治区)
垢版 |
2017/03/29(水) 13:44:23.98ID:ecbu4XVZ0NIKU
「なんで働かないといけないんですか?」と聞いた学生への、とある経営者の回答。
http://rfdyy.tribit-field.jp/1703.html
0065ハコオシ(茸)
垢版 |
2017/03/29(水) 22:55:27.94ID:ZuvoFnkzdNIKU
欅坂×不良学園小説

「大丈夫!?」
織田の顔を覗き込むと、そこに苦悶の表情はなく、顔の筋肉は弛緩していて、まるで眠っているかのようであった。
・・・・・・死んじゃって・・・・・・。
一瞬、そう思ってしまったが、織田の胸が微かに上下していた。
呼吸は止まっていない。
織田は相当なダメージを受けたはずだが、それにもかかわらず、気を失っているだけだった。
「どうして!どうしてこんなことするの!」
私は顔を上げ、こちらを見下ろしている少年に対して言った。
この少年はいったい誰なのか。
なぜこんなことをするのか。
以前、初めて会ったとき、私を助けてくれたこともいまだ不可解だったこともあって、私はこの少年のことーー誰なのかも、行動の理由も、全くわからなかった。
「・・・・・・」
少年は何も言わないでこっちを見ているだけだ。その顔にはこれといった感情は認められない。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
私は、目をそらさずに、少年を睨む。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・げよう」
ーーえっ?
いま、少年がポツリと何か言った。
「・・・・・・なに?」
「逃げよう」
その言葉の意味がよくわからなかった。
『逃げよう』ーーいきなり自分たちを襲撃してきた者が、何を言っているのだろうか。
「はやく・・・・・・ここから」
少年は、抑揚のない調子でそう口にした。
ーー逃げる。
次第に私の中で、慌てて、揺れて、浮き足立っていた気持ちが、すっと胸の奥に足をつけた気がした。
ーーそうだ。私はこんなところでなにをやっているのだろう。
訳がわからないまま、こんなところに行かなければならないようになって、こんな訳のわからない事態に面して。
こんなところから、はやく立ち去ってしまえばいいのに。
「逃げよう」
少年が再び言った。
・・・・・・でもなんで?
少年はーー誰とも知らないこの少年は、私にこんなことを言うのだろう?
というか、私を助けに来てくれたのだろうか?でもなんで?
私と少年は、見知らぬ間柄なのに。
しかも、少年は、以前も私を助けてくれていた。
「行こう」
そう言って少年は、手を伸ばして、私の腕を掴んだ。
「あっ」
そのまま地面に膝をつけていた私を引き起こして、腕を引いて出口の方へ走り出す。
ここにいる理由などないことを思い出した私は、そうではあるけれども、わずかばかりではあるが知り合ってしまった織田や、
他の不良集団の人を、倒れたまま置いていってしまうことに、後ろ髪を引かれる思いがした。
「ま、待って」
とっさに、そう発した。私の手を引く少年がこちらを振りかえる。
0066ハコオシ(茸)
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2017/03/29(水) 23:12:33.82ID:ZuvoFnkzdNIKU
欅坂×不良学園小説

「待って・・・・・・鞄が」
私は、とっさに口にした。
「鞄、取ってきていい・・・・・・?」
そう少年に訊ねると、少年は微かに頷いて、私を掴んでいた手を放した。
少年の手から離れた私は、方向転換してフロアの片隅に置いていた鞄を取りに言った。
確かに、ここに持ってきていた鞄を忘れず持っていかなければならないというのはあるが、とっさにそう口にしたのは、忘れ物をしないがためではなく、少年の手から離れる口実がほしかったからだ。
・・・・・・。
鞄を取りにいく、この短い間に私は考えた。
本当に少年についていくか・・・・・・。それとも、このまま、少年から離れて、この場に残るか。
・・・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・やっぱり、逃げよう。
やはり、私には関わりのないことだ。私はこの変な状況に巻き込まれただけだ。
いきなり、『捧げ物』だとかいう訳のわからないものに選ばれて、無理矢理こんなところに連れてこられて。
ーー彼らに肩入れする必要はない。
確かに、倒れている織田たちのことは気になるけれど、自分からここに残る必要はない。

そう自分の気持ちを確かめ直して、私は置いていた鞄をーーでもなんでこの少年は私を助けてくれるのだろうと繰り返し疑問に思いながらーー持ち上げ、少年の方を振り返った。
ーーえっ。
私が振り返った少年のその先に、別のもう一人の姿があった。
 
0067ハコオシ(茸)
垢版 |
2017/03/29(水) 23:41:50.50ID:ZuvoFnkzdNIKU
欅坂×不良学園小説

数多くの店が並び、多くの人が行き交う街の表通りから脇道に
入って、深く進んだところにある裏通りは、小綺麗に整備された表通りとは対照的に、道路には猫かカラスに荒らされたごみが散らばり、壁にはスプレーで落書きがされ、人通りはほとんどない。
その裏通りを、西のアジトにむかって進む。
もうアジトは間近だ。
「志田さん!あそこ!」
隣を走る齊藤が斜め前方を指差した。
見ると路地の物陰に、
その斜向かいには、西のアジトがあるビルがある。
やつらも俺たちに気がついたのか、俺たちにむかって手を振ってきた。
「先に着いていたのか」
物陰に姿を潜めていたほかのメンバー、原田葵たちの班のもとに駆け寄る。
俺たちは最短距離を進んでいたが、途中、加藤から連絡があり、そのため少しの間、足止めを食らった。
しかも、リサオがなにやらアジトに引き返したらしい。
「ほかの奴等はまだか」
俺は辺りを見回した。
だが、他のルートを進んだ奴等はまだ姿を表さない。
「ちっ」
舌打ちがでる。他の奴等から、守屋たちと遭遇したという報告が来ないということは、守屋がまだ西のアジトにいるーー俺たちを待ち受けている可能性が高いということだ。
西のアジトを任せた連中たちが気にかかる。
”軍曹”守屋は、冷酷非道で名が通っている。
ーーこうしている間にも・・・・・・。
「先にいく。お前たちは、他のやつらが来たら乗り込め」
俺はいまここにいる他のメンバーにそう指示した。
そうして、西のアジトがあるビルに足を踏み出したとき、
「?」
左腕を引っ張られるのを感じた。
振りかえると、原田が俺の左袖を引っ張っていた。
「なんだ?」俺が問うと、
「だめ」
原田はふるふると首を振って言った。
「ただでさえ守屋は待ち伏せしているかもしれないのに、一人でいっちゃだめ。戦力の小出しはもっとだめ」
原田は俺の目をまじまじと見つめていった。
原田はグループで一番年少だったが、そのわりに頭がよかった。
ーーたしかに、その通りだ。
歯がゆいが、他の奴等を待つのが正しい判断だ。
「ちっ」
それでもやはり、舌打ちのひとつもしないと、この苛立った感情をなだめられなかった
0068名無しって、書けない?(地震なし)
垢版 |
2017/03/30(木) 01:28:29.29ID:rc1CgGxi0
みてます
0069名無しって、書けない?(茸)
垢版 |
2017/03/30(木) 06:45:46.26ID:hbSRUoc1d
68さん
ありがとうございます。
ただ今夜は更新できるかわかりません。
出来る限り時間をつくりたいですが、ご了承願います。
0070名無しって、書けない?(神奈川県)
垢版 |
2017/03/30(木) 15:26:14.95ID:YvPeerZf0
「なんで働かないといけないんですか?」と聞いた学生への、とある経営者の回答。
http://gastt.eitaro.jp/1703.html
0071名無しって、書けない?(和歌山県)
垢版 |
2017/03/30(木) 18:56:46.42ID:AmsO8ooH0
「なんで働かないといけないんですか?」と聞いた学生への、とある経営者の回答。
http://goll.alinko.jp/1703.html
0072ハコオシ(茸)
垢版 |
2017/03/30(木) 23:06:43.50ID:Dk71pqVId
欅坂×不良学園小説

私たちの前に立っていたのは、渡邉だった。
「これはどういうつもり?」
渡邉は、柔らかな微笑を浮かべていった。
だが、その眼は据わっているのが見えた。
「平手、どうしてこんなことを?」
口調こそ穏やかだか、威圧感というのだろうか、今の渡邉は私には怖く感じられた。
「・・・・・・」
少年は、例によって何も答えない。
「そう。まあいいや」
渡邉はフフッと笑ってそう納得したように言うと、こちらに向かって、すたすたと歩みだした。
ーー!
しかし、みるみるその歩速は速くなって、あっという間に加速したかと思うと、かなりのスピードで少年に向かって突進してきた。
ーー速い!
渡邉は少年の手前で飛び上がった。
すると、駆け上がるような動きで、両足によるに連続の蹴り上げの攻撃を放った。
少年は、両手でそれを押さえ込むように防ぐ。
ドドッ。
二連続の打撃音が鳴る。
渡邉の攻撃を防いだ少年は、
渡邉が宙に浮いたその一瞬のうちに斜め後方に下がると、拳を脇下に引き付け、渡邉に対して反撃の体勢をとった。
少年が蹴り技から着地したばかりの渡邉を狙って一足跳びで飛び込む。
ーードッ。
鈍い音のあと、どさっという音を立てて、少年が後ろに突き飛ばされたように倒れた。
着地するや否や突きだした渡邉の横蹴りが、少年の腹部に食い込んだのだ。
「うっ・・・・・・」
少年が、苦痛の声を出したのが聞こえた。
倒れた少年の前に立つ渡邉は、少年を見下ろして言った。
「それなら、全部吐いてもらうから。」
0073ハコオシ(茸)
垢版 |
2017/03/30(木) 23:32:00.32ID:Dk71pqVId
欅坂×不良学園小説

「いくぞ」
やっと、他のやつらが別ルートから合流してきた。
「あれ、渡邉さんは・・・・・・」
メンバーの一人が、ここにいる奴等の顔ぶれを見渡し、気がついて言った。
「リサオはいない。なにか考えがあるらしく、アジトに引き返した。俺たちだけで守屋とやるんだ」
俺は、他のやつらが動揺する暇を与えぬように、手短に言った。
だが正直いって、渡邉がーー理由があってのことだとしてもーー今ここにいないのは片腕が欠けているも同然の痛手だった。
情報によると守屋たちは全員そろっているらしい。
ということは、あの守屋だけでなく、”狂犬”小林をはじめとする他の敵もいるということだ。
守屋は俺が相手をするとして、渡邉には小林に当たってほしかった。
ここにいる他のメンバーで、敵のNo.2に対抗できる奴は・・・・・・。
ーー苦しい戦いになる。
最悪、このアジトを放棄し、仲間を助けて撤退することも考えなければならない・・・・・・。
「ちっ」
思わず舌打ちをしてしまった。原田が「マナキ?」と少し、不安そうな顔で見上げてきた。
リーダーが、不安を滲ませてはならない。
俺はメンバーに顔を向けた。
いまそのことを気にしても仕方がない。ただ、死力を尽くすのみだ。
「いくぞ」
俺たちはは守屋たちを討つべく、西のアジトへ進入した。
0074名無しって、書けない?(地震なし)
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2017/03/31(金) 04:14:08.04ID:1c3g15xT0
あげとくか
0075ハコオシ(茸)
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2017/03/31(金) 21:35:37.67ID:vkO0p9jId
欅坂×不良学園小説

西のアジトはーーほかのところも似たようなものだがーー使われなくなった三階建ての建物を勝手に占拠して作ったものだ。
俺は建物の廊下ーーメインフロアへの入り口であるドアの前で、後ろに並ぶメンバーを振り返った。
「いくぞ」
小さな声メンバーに合図して、メインフロアへのドアを蹴って開け、仲間とともに、一気に中に突入する。
メインフロアは、元は会社のオフィスだったのか、天井からは何かのコードが垂れ下がり、いまも事務用の机やロッカーがーー斜めを向いて置かれたり、倒れていたりと、乱れた状態でーーいくつか残っている。
そのため、身を隠せる物陰はあった。
守屋たちが、俺たちを包囲する形で待ち伏せている可能性があるとみた俺たちはーー正確には、原田の助言かあってのことたがーードアをくぐったあと、素早く円形に展開して、周囲を警戒した。
・・・・・・守屋たちは?
辺りを見渡すも、守屋たちの姿が見えない。
違和感を感じながら、円陣を崩さないままじりじりと奥に進むと、
フロアの奥の壁際に、西のアジトを任せたほかのメンバーたちが倒れているのが目に入った。
「大丈夫か!?」
周囲を十分に警戒しながら、そいつらのところに駆け寄る。
みんな気を失っているようだ。
西のアジトのメンバーの一人の体に腕を回して起こすと、
今気がついたのか、「うっ」という呻き声を上げて、そいつは顔を歪めた。
「・・・・・・志田さん・・・・・・」
そのメンバーが弱々しい声で言った。
「何があった?」
そいつの、切れて血がにじんだ唇や、顔の腫れを見るに、襲撃を受けたことは間違いない。
しかし、この場に守屋たちの姿は無かった。
ーーやはり、あっちのアジトに?
リサオのいう通り、守屋たちは俺たちを西のアジトに誘きだし、その隙に、俺たちが普段本拠とするあちらのアジトに向かったのだろうか?
ーーだが、ここに向かう途中、守屋たちはいなかった。
もちろん、俺たちがたどらなかった別の道を通って守屋たちがあちらのアジトに向かった可能性はある。
ーーなにかおかしい。
守屋は本当にここに来たのだろうか?
この違和感のある状況を見て、ちらりと別の考えが頭をよぎったとき、携帯が鳴った。
0076名無しって、書けない?(チベット自治区)
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2017/04/01(土) 00:14:23.35ID:JC8Nx+jo0USO
てちがやったのかな?
Evaluation: Average.
0077ハコオシ(茸)
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2017/04/01(土) 07:16:51.69ID:G8Eezy1VdUSO
76さん
言わないで…
0078名無しって、書けない?(チベット自治区)
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2017/04/01(土) 08:14:18.12ID:JC8Nx+jo0USO
>>77
あっごめん…
0079名無しって、書けない?(庭)
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2017/04/01(土) 11:10:18.37ID:0JWNbkvkaUSO
わろたwww
頑張ってねー
0080ハコオシ(茸)
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2017/04/01(土) 23:40:32.31ID:J4XuhGHId
欅坂×不良学園小説

静かな、だが、ただならぬ威圧感を放つ渡邉に、私は息を呑んだ。
だが少年は、構わず渡邉に立ち向かっていった。
少年が渡邉との間合いを詰めて、左右の拳の連続攻撃を仕掛けた。
シュッシュッ、シュッ。
布擦れの音が聞こえる。
だが、少年はコンパクトな動きで渡邉に拳を繰り出すも、渡邉はそれを左右に身を翻し、華麗に避ける。

だが、そのうちの一つが渡邉の頬を打った。
ーー当たった!
その衝撃のためか、渡邉の動きが一瞬硬直する。
好機とばかりに、少年が大きく一歩踏み出し、右の拳を突きだした。

その瞬間、渡邉の顔ににやりと笑みが浮かんだのが見えた気がした。
「!」
攻撃されたのは少年だった。
まるで居合い抜きのような動きで渡邉は、斜めにステップを踏み出すと、少年の攻撃の線から体を外し、
膝から下を鋭く振った、小さい弧を描くコンパクトな回し蹴りを、右拳を突きだしたがためにがら空きになった、少年の腹部に食い込ませたのだ。
少年が二三歩、その場によろめいた。小さくないダメージを受けたようだった。
ーー強い。
私は、志田と対等な口ぶりでしゃべっていた理由がわかった。
この少年は、かなりの強い。
0081ハコオシ(茸)
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2017/04/01(土) 23:41:10.74ID:J4XuhGHId
欅坂×不良学園小説

「あ、そうだ」
突然、何かを思い出したような口ぶりで、渡邉が、服のポケットに手を入れた。
取り出したのは携帯電話だった。
そして、なにやら指を動かした。
ーー連絡をとるつもりだろうか?
すると、
少年も、渡邉の意図を察したのか、渡邉に攻撃を仕掛けていった。
渡邉が携帯を操作するのを妨害しようとしているようだった。
「マナキ・・・・・・平手だ・・・・・・戻ってきてきてくれ」
渡邉は少年の攻撃をかわしながら、携帯に向かって言った。
攻撃をかわしながらだからか、その口調は途切れ途切れとなっていたが、おそらく、相手ーー志田のようだーーには通じているだろう。
それに焦ったかのように、少年が渡邉にむけて、拳を脇のあたりに引き付けた。
だが、少年が攻撃してくるのを認めた渡邉はーー少年が躍起になって仕掛けてくるのを誘っていたかのようにーー逆に少年に向かって一歩踏み出していった。
少年が攻撃するより早く、曲げた右脚を腰の回転にのせて伸ばし、少年の側面を狙う。
渡邉の回し蹴りによって迎撃される展開となった少年は、それを防ぐべく、素早く左手を立てるように体に引き付け、渡邉の攻撃を防御しようとした。
バシッ!
なにかを強く叩く音がフロアに反響した。
ガードのために立てた少年の左腕が、渡邉の回し蹴りの勢いに負け、渡邉のしなった脚が、少年の少年の肩をしたたかに打ったのだ。
少年が痛みに顔をくしゃっと歪ませるのが見えた。
さらに渡邉は、回し蹴りをした右脚を、そのままたたむように体に引き付けて、そこから横蹴りを放った。
ーーガッ!
少年は両手でそれを受けるも、その強さに負けて、後ろによろめいてしまう。
しかし、渡邉の動きはまだ止まらなかった。
渡邉は蹴りから戻した脚を、地面に着けて、軸足を入れ換える。そして、体をひねって一瞬少年に背を向けると、振り向きざまに左脚による後ろ回し蹴りを繰り出した。
「っ!」
少年はすんでのところで左腕を立て、円の軌道を描いて襲ってくる
渡邉の回し蹴りを防ぐも、もぎ取られるようにそのガードを崩されてしまった。
ドッ。
体の回転をきれいに正面で収めた渡邉は正面にいる少年に、一足踏み込んで、右腕の突きを少年の体に打ち込んだ。
0082ハコオシ(茸)
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2017/04/01(土) 23:44:05.22ID:J4XuhGHId
79さん ありがとうございます。
ところで、W-KEYAKIZAKAの詩のMVを見ました。
あんなに切なくて美しい映像を見たら泣いてしまいます。感動しました。

欅坂×不良学園小説

「う”っ」
苦しそうな声を吐いて、少年が片ひざを床についた。
「平手って、こんなものだったっけ?」
渡邉が拍子抜けしたかのように、首を傾げていった。
その顔にいつもの微笑はなく、いままで見たことのない冷たい眼で、渡邉は少年を見下ろしていた。
「そろそろ、話してもらおうかな」
渡邉はそう言って、一歩一歩、少年に近づいていく。
その顔には不気味な微笑みが浮かんでいる。

少年はまだ立ち上がらない。
そのとき、
「・・・・・・逃げろ」
少年が、膝をついたまま、顔だけをこちらに向けて言った。
ーーえっ?
とっさの言葉に、私は戸惑ってしまった。
「逃げろ!!」
さっきよりももっと大きな声で、少年は叫んだ。
ーー逃げろ。
私はその言葉に打たれて、ばっと駆け出した。
少年の叫びに突き動かされたように、体が半ば勝手に動いていた。
あっ、という顔で渡邉が私に顔を向けたのが、出口をまっすぐ見ていた私の視界の端に映った。
その表情に、一瞬、逃げることへの後ろめたさが胸を浮かんだが、渡邉の顔は、立ちふさがるように私と渡邉の間に割って立った
少年の体に遮られて、見えなくなった。
0083名無しって、書けない?(庭)
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2017/04/01(土) 23:58:54.89ID:0JWNbkvka
>>82
よねさんとねるのシーン泣けたわあ
0084ハコオシ(茸)
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2017/04/03(月) 21:48:46.58ID:Div2Xmsmd
欅坂×不良学園小説

アジトに駆けつけてみると、建物の付近で一人、さらに一階の入り口でもう一人、メンバーが倒れていた。
予感が確信へと変わりつつあるなか、階段を上り二階に入ると、平手が佑唯を連れていこうとしているところであった。
なぜ平手がそんなことをするのか、理由はわからないが、みすみす逃す訳にはいかない。
しかし、平手を追い詰めたところで、思わぬ展開になった。
「逃げろ!」
いきなり平手が後ろを向いて叫んだかと思うと、今泉佑唯が出口に向かって走り出したのだ。
ーーさせるか。
だが、彼女の行く手を塞ごうとするも、平手が間に割ってはいってきた。
「邪魔だ!」
モーションの小さい左回し蹴りで平手の側頭部を狙う。
だが、攻撃を焦ったためか、それは平手にガードされ、逆にカウンターの拳をもらってしまった。
「くっ」
しかし、この程度、大したダメージではない。
体勢を立て直し、まずは平手を片付けようと、目の前の的に焦点を合わせるも、
「!」
平手は、わずかに身を沈めたかと思うとーー攻撃の予兆を悟らせない足の運びでーー瞬間的に間合いを詰め、目の前に肉薄していた。
ーー速い!
平手が左右の拳と脚による連続攻撃を仕掛けてくる。
それなりにダメージを与えたつもりだったが、平手の動きは思った以上に速かった。
ーーくそっ。
思わぬ平手の猛攻に守勢に立たされる。
繰り出される連続の攻撃を、かわし、さばいている間に、佑唯は横を通りすぎて後ろに抜けていき、すぐに階段を駆け下りる音が耳に入った。
ーー逃げられた!
0085ハコオシ(茸)
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2017/04/03(月) 22:58:05.03ID:Div2Xmsmd
欅坂×不良学園小説

佑唯に逃げられた以上、平手まで逃す訳にはいかない。
僕は佑唯のことは置いて、平手に集中した。
突きだされる平手の拳を手で払い、体をひねってかわす。
ーーこいつを捕まえる。
捕まえてすべて吐かせる。
だが、それはそんなに難しいことには思えなかった。
佑唯が逃げる際に見せた平手の猛攻も今は、攻撃と攻撃の間に、空白が見られるようになってきている。
その隙に拳を打ち込んでやると、それらは容易く平手の体に命中した。
体力が切れているのは瞭然だ。
それにダメージも蓄積しているのだろう。
バッ。
平手は一旦攻撃を止めて後ろに跳びずさる
「ハァハァ」
後ろに下がり距離をとった平手は、鋭い眼でこちらの動きを注視しているが、肩で息をしており、構えも少し崩れ、隙を覗かせている。
それにしても、と内心可笑しくなる。
平手は何でまたこんなことをするのだろう。
仮に何か理由ーー佑唯と知り合いなのだろうか、それで『捧げもの』になった彼女を助けにきたのだろうか―ーがあるとして、今、平手がやっていることに意味があるとは思えない。
佑唯には一時的に逃げられたが、
また学校から連れてくればいいのだから。
むしろ、取り残された平手のほうが悲惨だ。
もうすぐ仲間たちが戻ってくる。そうなればこいつは袋の鼠だ。
こんなことをした理由はもちろんはなしてもらうがそれだけでは済まない。
きっとマナキはこの玩具を喜んでくれるだろう。
ーー落とし前をつけてもらうよ。
止めを刺そうと、再び平手との間を計り、攻撃の機を探る。

だがその時だった。
構えをとって正対していた平手が、急に背を向けて走り出した。
ーーなんだ?
平手の意図が読めず、その動向を目で追う。
平手の行く先は、このフロアの窓であった。
ーーしまった!
平手が何をするつもりなのか、何もしないで見ていたのが間違いだった。急いで平手の後を追う。
しかし、こちらが駆け出したときにはすでに、平手は窓の縁に片足を掛けていた。
その後ろ襟を掴んで、こちらに引き下ろそうと手を伸ばす。だが、平手は、こちらの手が届く前に、窓の外に身を踊らせていた。
0086ハコオシ(茸)
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2017/04/03(月) 22:58:54.79ID:Div2Xmsmd
欅坂×不良学園小説

「くそっ」
窓から身を乗りだし、下を覗き込む。
二階から飛び降りた平手は、うまく着地して走り出していた。
その先には、先ほどこの建物から出ていった今泉佑唯が立っている。
平手は、驚いた顔をしている佑唯の手を取ると、そのまま彼女をつれて、走り出した。
ーーあいつ!
追いかけなければ。だが、階段を降りて外に出てからでは、その間に平手たちを見失ってしまう。
それなら、と平手がしたように窓から飛び降りるべく、窓から下までの距離を目測する。
ーー高い。
二階とはいえ、それなりの高さがあった。簡単に飛べる高さではない。
そうして躊躇っているうちに、平手たちはどんどん路地の先に進んでいき、角を曲がり、姿を消してしまった。
ーーしまった。
油断していた。
まさか、飛び降りるなんて。

だが、後悔しても後の祭りだった。
0087名無しって、書けない?(チベット自治区)
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2017/04/03(月) 23:06:22.21ID:XxNSrH0Q0
一日の終わりの楽しみになってますw 応援してます^ ^
0088ハコオシ(茸)
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2017/04/04(火) 05:46:21.55ID:oNblGbPxd0404
87さん
本当にありがとうございます。
途中で投げ出さないように頑張ります。
0089ハコオシ(茸)
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2017/04/04(火) 23:38:39.30ID:oNblGbPxd
欅坂×不良学園小説

少年に言われたまま、不良少年らのアジトから逃げ出したものの、建物の外に出たところで、私はどうしてよいかわからなくなった。
ーーあの子は・・・・・・!?
建物から少し離れたところに立って、今出てきたばかりの出口を振り返るも、先ほどの少年が出てきそうな気配がない。
どうしよう・・・・・・。
理由はわからないが、自分のことを助けてくれた人を置いて一人だけ逃げることはできない。
まだ、少年は出てこない。
・・・・・・彼はどうなったのだろう?
渡邉とまだ闘っているのだろうか?渡邉は彼をどうするつもりだろう・・・・・・?
落ち着かなくて、あてもなく視線をあちこちに向けていると、視界の上のほうーー建物の窓に動く影が見えた。
ーーえっ?
窓に脚を掛けて身を乗り出していたのは、あの少年であった。
そしてあろうことか、彼は窓からその身を投げた。
「きゃっ!」
少年が飛び降りたその瞬間を目撃して、私は思わず悲鳴を上げた。
だが、私の予想に反し、少年は見事に着地すると、そのままこちらに向かって駆け出してきた。
「大丈ーーえっ!」
少年にかけようとした言葉を言い切る前に、少年は私の手を掴んで、私を引っ張った。
「ちょっと!待って!」
私を早くこの場から離れさせようとしているのであろうか、少年は強い力で引っ張っていく。掴まれている手首が痛かった。
少年は裏の路地のほうに向かっているようだ。
ーーいったいどこに?
なすすべなく、私は少年に引かれるがまま、志田たちのアジトから離れていった。
0090ハコオシ(茸)
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2017/04/05(水) 00:41:33.85ID:q8UrUsHQd
欅坂×不良学園小説

少年に連れていかれるまま進んだのは、私が今まで行ったことのない、街の裏路地であった。
路地の両側は、通りに並ぶ建物の裏側か側面なのか、壁面にパイプが走り、排気口が空気を吐き出し、室外機がぬるい風を吹き付けている。
地面には、ごみがところどころ落ちていて、スペースがあったのだろうか、なにもないコンクリートの壁にはスプレーで落書きがしてあった。
ーーこんなところ、あったんだ。
足を動かしながら、知らなかった街の裏側の風景に、驚きとかすかな不気味さを覚えた。
・・・・・・でも、どこにいくのだろう?
少年にーーたぶんーー助けられたものの、逃げ込んだこのあたりは私の知らないところだ。
一応、志田たちのところからは逃げられたが、かといってこのまま見知らぬところを進んでいっては、私は一人では帰ることができない。
「あのっ!ねえ!」
前を走る少年に呼び掛けてみるも、少年は見向きもせず、私の手を引いて走り続ける。
そして、裏路地のさらに深くまで、しばらく走り続けたときだった。
・・・・・・あれ?
さっきより、少年の走るスピードが遅くなってきている気がした。
正直、手を引かれなくても、このぐらいの速さなら自分の足で走れる。
・・・・・・やっぱり。
少年の走るスピードはみるみる落ちていった。
私が急いで走ったら、私のほうが速いくらいのスピードだ。
そして、もはや、ジョギングのような速さにまで、走る速度が落ちたときだった。
不意に、私を引っ張っていた少年の手が、私の腕を放した。
どうしたのだろうと思いながら、私は足を止めた。
少年も二、三歩、慣性のまま動いて、私の少し前で足を止める。
「あの・・・・・・」
もう、ここまで逃げれば十分、ということだろうか?
私は少年に声をかけた。
少年にはーーもちろんお礼も言わなければならないがーーいろいろ訊いてみたいことがある。
「あの君って・・・・・・」
もう一度、後ろから声をかける。
だが、少年は前を向いたままだ。
0091ハコオシ(茸)
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2017/04/05(水) 00:42:29.28ID:q8UrUsHQd
欅坂×不良学園小説


「・・・・・・どうしたの?」
なにかおかしいと思って、少年の前に回る。
見ると、元より白かった気がする少年の顔が、青白く見えるほど血の気を失っていた。
「だ、大丈夫!?」
少年の異常を直感させる顔色の悪さに、私は驚愕した。
目も生気が抜けたようで、焦点が定まっていない。
足取りも、斜めに足が出たかと思ったら、転倒しまいとしているのか、今度は反対側に足が出て、見るからにふらふらしている状態だ。
「そんな・・・・・・えっ?」
さっきまで驚くほど動いていたのに、この少年の姿の変わりように戸惑いを禁じ得ない。
「しっかりして!」
少年は今にも倒れてしまいそうだったので、私は彼のそばに寄り、両肩それぞれに手を添えた。
「あっ」
すると、本当に少年は、体から力が抜けたように。カクンと膝を折ってその場に崩れ落ちてしまった。
倒れた少年が地面にぶつからないように、とっさにその体を支えようと腕に力をいれたが、これが男の子の体の重さなのだろうか、堪えきれず、私も体勢を崩してしまった。
少年が頭を地面にぶつけないように、なんとか少年を胸に抱き止める。
それから、力を入れて、少年を腕に抱くように、少年の体の横に自分の体をずらす。
そうして、少年の顔を覗き込んだ。
「ねえ、しっかりして」
呼び掛けたものの、少年は反応しない。
もう一度呼び掛ける。
「ねえ、大丈夫!?」
すると、少年の瞼がぴくりと動き、ゆっくりと開いた。
ーー気がついた!
少年の半開きの瞼のなかで、瞳がかすかに揺らぐ。
すると揺れていた瞳が動きを止めて、私の顔を映した。
「・・・・・・さん」
「えっ?」
少年の唇がわずかに動き、かすかに何か聞こえた気がした。
「なに?」
少年の口に耳を近づける。そうしてもう一度少年がなにか言うのを待った。
「・・・・・・姉さん」
少年の弱った呼気とともに聞こえてきたのは、確かに「姉さん」という言葉だった。
0092名無しって、書けない?(庭)
垢版 |
2017/04/05(水) 10:00:12.90ID:e/hlSsDWa
姉さんって誰!?

毎日楽しみに待ってますんでマイペースで頑張ってください
0093ハコオシ(茸)
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2017/04/05(水) 12:58:13.43ID:q8UrUsHQd
92さん
ありがとうございます。
気が向いたら、だとやらなくなってしまうので、むしろ強制的だという意識をもって書きます!
0094ハコオシ(茸)
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2017/04/05(水) 22:28:49.48ID:q8UrUsHQd
欅坂×不良学園小説

気を失ってしまった少年は、何度声を掛けても一向に目を覚まさなかった。
ーーどうしよう・・・・・・。
周囲をを見回すも辺りに人気はなく、助けを呼ぶにも、そもそも、ここがどこかもわからない。
「しっかりして!ねえ!」
少年の体を揺さぶっても、その頭が力なくゆらゆらと揺れるだけで、少年は目を開けてくれない。
私はどうすることもできなくて、ただ少年に呼び掛け続けることしかできなかった。
すると、
「ん?平手?・・・・・・おい、平手!?」
突然前のほうから、驚いたような声が聞こえてきた。
少年から顔をあげて声がしたほうを見ると、前方の路地に誰かが立っていて、こちらを見ている。
「うわ!誰だお前!」
少年ーーそういえば先程から平手と皆が口にしていた、この少年から顔を上げた私と目があったその男の子は、大袈裟なまでに驚いた表情で声を出した。
「え、いや、えっと・・・・・・」
私は戸惑ってしまった。突然現れた知らない男の子に、なんと言っていいかわからない。
その男の子ーーストリート系のファッションに、黒いキャップを斜めに被った少年は、私が何者か怪しむような顔で、ゆっくりと近づいてくる。
「誰だよ、お前・・・・・・?」
眉を八の字に寄せて、訝しむ目を向ける。
「えっと、私は・・・・・・」
「お前、平手になにをした・・・・・・?」
この状況を怪しんでいるのだろう。
黒キャップの少年は、私が答える前にさらに問いかけてきた。
「私は、この子に助けられて、それで・・・・・・」
「はあ?」
少年が険しい顔になった。
彼にうまく伝わっていない。だけど、これ以上どう説明しろというのか。起きたことをそのまま言葉にしたら今言ったとおりだ。
気まずい空気が流れ出したとき、
「うっ」
と、小さな呻き声が聞こえてきた。
見ると、いままで気を失っていた平手が、目を瞑ったまま眉間にしわを寄せ、苦しそうな表情を見せていた。
ーー気がついた!
「ああ、もう!とにかく、平手が先だ!」
少年も、平手の様子が目に入ったのだろう、癇癪を起こしたような口調で言った。
「貸せ」
平手のそばに膝をついて腰を落とした少年は、平手の体に腕を回し、彼の体を起こした。
「重てぇな・・・・・・」
平手より背の小さいその男の子は、きつそうな表情をして、平手を立たせる。
そして、平手に肩を貸す体勢で、歩き始めた。
どこかに彼を運ぶのだろうか?
平手は意識が戻っているかもしれないが、立っているのがやっとという感じで、満足に動けないようだ。
そのため、少年が一人で平手を支えて歩く形になっている。
私は、じっとしていられなくて、力は及ばないかもしれないが、少年の左腕を自分の肩に掛けて、平手の体を支えながら、彼を運ぶのを手伝った。
「お前、名前は!?」
歩きだしてから、少年は今思い出したかのように訊ねてきた。
「今泉・・・・・・佑唯・・・・・・」
平手の体が私には重すぎて、呼吸が途絶え途絶えになりながら、私は名乗った。
「俺は、鈴本。よろしくな」
黒キャップの少年ーー鈴本は、平手の体を間に挟んで、前屈みにこちらに顔を向けてながら言った。
0095名無しって、書けない?(空)
垢版 |
2017/04/06(木) 08:43:48.76ID:5rGvEHsLx
スケバンものはアイドルの定番兵器やね
0096名無しって、書けない?(茸)
垢版 |
2017/04/06(木) 11:02:51.66ID:qG+LlDsqd
マジすか風に名前つけるなら
菅井 オジョウ
守谷 グンソウ
織田 ヨンモジ
鈴本 クリタロウ

までは想像できた
0097ハコオシ(茸)
垢版 |
2017/04/06(木) 13:09:48.95ID:cUhRTQnfd
95さん、96さん
いいですよね。欅坂のドラマ見たいなあー。
0098名無しって、書けない?(dion軍)
垢版 |
2017/04/06(木) 13:51:22.26ID:YSjNpwZf0
推しメンは??
0099ハコオシ(茸)
垢版 |
2017/04/06(木) 14:56:04.42ID:cUhRTQnfd
98さん
土生ちゃんと志田です。
てちは尊敬の対象
あとは面白い子はみんな好きです。
0100名無しって、書けない?(地震なし)
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2017/04/06(木) 15:04:13.96ID:/0EIeBar0
土生はまだ出てきてないな
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