在日米陸軍基地「キャンプ座間」(神奈川県)の消防隊に所属する日本人従業員の男性(35)が、上司らから約2年半にわたり嫌がらせや暴言、暴力を受け、うつ病になったとして昨年3月に労災認定されたことが分かった。この消防隊では約3年半前にも別の日本人従業員がパワハラで労災認定された。男性は「パワハラのない誠実な職場に改めてほしい」と訴えている。(曽田晋太郎)
◆無視、罵倒そして殴られ
 男性の説明や労災認定資料によると、男性は2015年8月の入隊後、日本人の上司や同僚から無視されるなどの嫌がらせを受けるようになった。その後、胸ぐらをつかまれて罵倒されたり、頭にごみ袋をかぶせられて殴られたり、「辞めちまえ」「仕事じゃなければ殺している」といった暴言を受けたりした。18年2月に体調を崩し、重症のうつ状態や適応障害と診断され、3月から休職した。
 男性は当時の状況を「体が動かず、手が震えて車のキーが掛けられなかった」と振り返る。家族も「会話はかみ合わず、何を言っても上の空で、常に表情はなかった」と打ち明ける。
◆認定後も、復帰指示は加害者のいる職場
 男性は18年5月に労災申請し、厚木労働基準監督署は昨年3月、上司らから「業務指導の範囲を逸脱するひどい嫌がらせやいじめ、暴行を受けた。人格や人間性を否定する言動が執拗に行われた」と判断し、労災認定した。
 その後、男性は主治医から職場復帰の許可が出るまで回復した。しかし、復職に向けた米軍側との面談でパワハラ加害者のいない職場を望むと伝えたにもかかわらず、加害者のいる職場への復帰を指示されたという。男性は改めて加害者のいない職場への復帰を求めたが、配属先が決まらないままとなっている。
 在日米陸軍は取材に「日本人従業員に関わる問題点は全て、日本政府と密に連携を取りながら対処している」と回答。その上で「個々の事例に関して見解を述べることは適切ではない」とした。