がん疑い伝えず患者死亡 名古屋大病院、ミスを謝罪

2016年9月14日 朝刊
名古屋大病院(名古屋市昭和区)は十三日、
二年前に画像検査で肺がんの疑いが判明した男性患者への治療や説明を怠り、手遅れになって今年七月に死亡する医療ミスがあったと発表した。
病院は遺族側に謝罪し、補償について協議している。

記者会見した石黒直樹病院長は「重大な事故を起こした。情報共有が不十分で全面的に病院に非がある」と述べ、再発防止に全力を尽くすと説明した。

病院によると、患者は名古屋市内の五十代男性で、二〇一四年六月十一日に高熱を発し、救急外来を受診した。
前立腺炎と診断され、約二週間の治療で回復した。

その際、全身のコンピューター断層撮影(CT)検査で放射線科の医師が右肺に直径五ミリほどの影を見つけ、初期の肺がんの可能性があるとして「フォロー(経過観察)を勧めます」との報告書(読影リポート)を作成。
しかし、治療に当たった泌尿器科と救急科の担当医師の計三人はだれも、男性への説明や経過観察など必要な対応をしなかった。

男性は今年三月、せきが出るようになったため、かかりつけ医を受診。
名大病院を紹介され、精密検査をしたところ、肺腺がん(肺がんの一種)と診断された。
この際、一四年の診療記録から肺がんの可能性が指摘されていたことも分かったが、既に手術が不可能なほど進行しており、抗がん剤治療などを行ったが死亡した。

病院は外部識者を交えた調査委員会を設置。
一四年にCTで確認された影は肺がんの初期状態だったと結論づけた。当時、手術していれば、五年後生存率は82〜66%だったという。

調査委に対して、担当医師らは「リポートを見たか記憶がない」と回答した。病院側は「見ていれば必ず対応したはずだ」と説明、リポートを見忘れていたとみている。
見忘れた理由は不明。再発防止のため、電子システムなどによる情報共有の徹底を図っている。

名大病院は昨年十二月にも、CT画像の影などに気付かず、通院患者の肺がんを三年にわたって見逃し、死亡する医療ミスがあったと発表している。