一人っ子に生まれたかった

私はよい子だけど大人しくて自己主張が下手くそだった
母は弟の大好きなハンバーグはよく作るのに私の好きな食べ物は何か知らない
私が仕事や勉強がよくできたという話は彼女にとってどうでもよいことのようだ
弟とは仲良くお喋りして私のことは興味がないようなふりをするのに父と私が仲良く喋ると嫌がる
弟が小さい頃の話をするとき母はとても楽しそうで私の話を父がすると母は詰まらなさそうな顔をする
母の子育ての思い出に私はいない
弟のことしか記憶にないのだ
弟のことは好きだ、大好きだ
でもあの子が生まれてからずっと私の話は聞いてもらえなかった
祖母が私をよい子だと言った
脈絡もないのにわざわざ何度も言うのだ
祖母の家に何度も逃げるように泊まりにいった
祖母とずっと話をしたかった
私の話を聞いてほしかったし祖母の話をずっと聞いていたかった
でも死んでしまった
話をしたいことがたくさんあった
一緒にしたいことがいっぱいあった
私はまだひとりでは生きていけない
祖母がいないとダメなんだ
祖母が私をよい子だと言ってくれないと寂しくて辛くてどうしようもない夜に耐えられない
祖母が私をよい子だと言って
ずっと一緒にいたいと言ってそうしてくれないと涙が止まらない
寂しい
祖母に会いたい
会いたくてたまらない