「大林は威圧的で、時には旧特高式の睨みをきかせ、時には日本料理を
食べないかとか、日本のえらい医師に私の病気をみさせようとか
硬軟両方の手を使う。少しでも多く喋らせようとの魂胆がありありだ。
帰国後に判明したのだが、大林は法務省刑事局の幹部検察官で、
当時『外務省出仕』となっていたのである。つまり本物の
公安検察官だったのだ」。大林宏は、法務省刑事局から何かの
怪しげな目的で中国の日本大使館に赴任し、帰国した伊藤律の取調を
担当していた。大林宏が単なる法務官僚ではない真相がよく分かる。
この男は、漆間巌と同じく、(現憲法下の戦後日本では消滅させられた
はずの)「内務省」の「特高」であり、イデオロギー関係の任務すなわち
思想警察の国策実務を担当する人生を歩んできた人間だ。日本の
「思想警察」の長なのである。