>>269
その結果、多数の死傷者が出ており多国籍軍の活動は単なる治安活動の域を越えている。イラクでは宗派対立に根差す武装勢力間の抗争や武装勢力と多国籍軍との抗争があり、
これらが複雑に絡み合い泥沼化した戦争の状態になっている。多国籍軍と国に準じる組織と認められる武装勢力との間で、治安問題にとどまらない武力を用いた争いがあり、国際的な武力紛争が行われている。

特にバグダッドは07年に入っても、米軍がシーア派、スンニ派の両武装勢力を標的に掃討作戦を展開。武装勢力も対抗し、多数の犠牲者を出しており、国際的な武力紛争の一環として殺傷や破壊行為が現に行われ、
イラク特措法にいう「戦闘地域」に該当する。

航空自衛隊は、米国の要請を受け06年7月ごろ以降、バグダッド空港への空輸活動を行い、輸送機3機により週4、5回、定期的にクウェートの空港からバグダッド空港へ武装した多国籍軍の兵員を輸送している。

空自の輸送活動は、主としてイラク特措法上の安全確保支援活動の名目で行われ、それ自体は武力の行使に該当しないとしても、現代戦では輸送なども戦闘行為の重要な要素であり、
多国籍軍の戦闘行為にとって必要不可欠な軍事上の後方支援を行っているといえる。

空自の空輸活動のうち、少なくとも多国籍軍の武装兵員を、戦闘地域のバグダッドへ空輸するものについては、他国による武力行使と一体化した行動で、自らも武力の行使を行ったとの評価を受けざるを得ない。
空自の空輸活動は、イラク特措法を合憲としても、武力行使を禁止した同法2条2項、活動地域を非戦闘地域に限定した同条3項に違反し、憲法9条1項に違反する活動を含んでいる。