急性大動脈乖離の心タンポナーデで臨死体験っぽいものをした。
12月24日のこと。
もう、ダメっぽい、と言われて嫁が泣いているころ、おれは上から自分を見下ろしていた。
よくある3mぐらいの高さ。
寝ている自分と平行になっていたな。
見下ろす自分の顔あたりははっきりしていたが、胸から下は綿アメみたいなものでボ〜ッと
ぼやけていた。
(ああ、死んじゃったんだ。もう、動かないんだな)
みたいな、他人事のような弱い感情があった。
同時に寂しいような、空しいような、悲しいような気持ちと、空白みたいな虚無?も感じた。
このあたりは、今となってはうまく言い表せない。
真下に見える自分は変にグッタリしていて、ペタンと薄っぺらで、白くて頼りなかった。

どれだけ時間がたったのか、全くわからなかったけど、麻酔覚醒のバッドトリップで
おれは医者と看護士に殴りかかっていた。
上から見たときの弱々しい自分のどこにそんなパワーがあったのかは知らないが、
覚醒時に感じた生命の墺低からのものすごい怒りは、今でもかすかに覚えている。