山川直人氏の短編漫画集『一杯の珈琲から』を読んだ。
ほぼすべてが珈琲または喫茶店にかかわる漫画である。
登場人物はほぼ市井の何でもない人々ばかり。

山川氏の漫画は、最近、ちくま文庫から『ハモニカ文庫と詩の漫画』が出て、
それを読んで面白かったので、アマゾンで『一杯の珈琲から』を注文した次第。
(『ハモニカ文庫と詩の漫画』については別に語る)

俺は叙情百パーセントの漫画は好きではないのだが、山川氏の絵柄はおかし味
というか、飄々とした味わいがあるので、反発を感じずに読むことができる。
全般的に、市井の何でもない人々の日常やささいな出来事が淡い筆致で描かれている。
(もっとも、収録されている漫画はそれなりに変化に富んでいて、叙情味の
強いもの、コミカルな味のあるもの、SF色の濃いもの、ファンタジーと言って
いいものなど、さまざまな趣向が楽しめる)

たぶん、山川氏の漫画で、「つまらない」、「退屈だ」、「何が面白いのか
わからない」などという感想を持つ読者もいるだろう。しかし、何でもない
人々の日常を淡々と描いて人を感動させるのは、純文学方面では王道である。
この手の名作は枚挙に暇がない。そういう小説に感動したことがある人には、
山川氏の漫画はおススメである。