あなたは今希望に満ち満ちている。
貼って痩せてなんとか結婚を前提に付き合ってもらえる事になったからだ。

このまま順調に事が進めば、新居を構える事になる。使い古した単身用の安冷蔵庫ではさすがに小さいため、付き合い当初の約束通り、『絶対苦労させないから僕と結婚を前提にお付き合いして下さい!』と宣言した自分を果たすべく、日々仕事に没頭している。
しかし、永遠続くデフレは、貴方を容赦せずシゴいた。昼夜問わず誰にも邪魔されない空間を確保出来、暇を見つけては息子をシゴき、何となく会社に行っていれば、貯金は出来ずとも給料が貰え、ひとり気楽に過ごせる日々は、何にも代え難い天国だった。
そして、結婚という折り返し地点に立ったとき、あの気楽な日々は、甘えた日々の連続だったことに気づく事になるだろうと想定していた。

幸か不幸か?ギリギリの所で【偉大なる何者か】が自分を手助けしているのではないかと疑いを持ってしまうほどだ。

紛れもなく天国である《独り》という天国は、歳を重ねるたびに地獄になるかもしれないという畏れを抱いた。

なぜ?わざわざ棄てたのかは自分でも理解し難い。

そして、〔本業だけの収入では約束を果たせそうにない〕という揺るがないデフレ、現実。

仕方なく夜の愉しみの一つであった、【音楽鑑賞】と【息子シゴき】を天秤に掛け、泣く泣く息子をシゴくのをやめ、ファミリーレストランの厨房で週2回×4時間を副業とした。

今まで【努力】なんて根性論者は、ただ要領の悪いアホだと思っていたのに、まさか、人知れず場所で副業、努力することになろうとは夢にも思っていなかった。

ただレンジでチンして出すだけの仕組みの中でも、一生懸命盛り付けし工夫した。
美味しそうに頬張る客を厨房から覗き見する度、厨房のシンクまで掃除するようになった自分が出現した事にも驚いたが、もっと驚きだったのは、バイトの女子高生や女子大生から、弱干だが好意をもたれた事だ。

出来ることならこの子たちのどの子でもいいから付き合ってくれないか…とも夢見たが、
私には決めた人がいる!として頑なに自制した。

遂に初期目標値に達し、バイトを辞める事になったのだが、一人の女子大生から手紙を貰った。

次の日、あれだけ夢中になって約束した本命の子に別れを告げたw



〜人生何が起こるかは何人足りとも予想はつかないもんだ。どこからでも何歳からでもスタートできるのだ〜


チャンちゃん