本土、呉鎮守府で迎えた対空戦
主力艦が沈没、施設も爆撃され惨敗だった
佐世保に響く住民のため息、どこからか聞こえる「今年で終戦だな」の声
無言で頷き始める艦娘達の中、今作の主役時雨改三は独り自室で呟いていた
スリガオ海峡で手にした勝利、喜び、感動、そして何より信頼できる仲間たち・・・
それを今の佐世保で守りきることは殆ど不可能と言ってよかった
「どうすりゃいいんだ・・・」時雨は蜜柑を握りしめた
どれくらい経ったろうか、時雨ははっと目覚めた
どうやら過去の回想に耽っていたようだ、絶えない敵の砲撃音が現実に引き戻した
「やれやれ、雨はいつか止むさ」時雨は苦笑しながら呟いた
矢矧が頭から流血した時、時雨はふと気付いた

「あれ・・・?友軍がいる・・・?」
相変わらず活躍なしの時雨が目にしたのは、前方を埋めつくさんばかりの友軍だった
幽霊のように青く発光し、英会話教室のように英語が飛び交っていた
どういうことか分からずに呆然とする時雨の横に、聞き覚えのある声が聞こえてきた
「まだ行ける?アーユーオケイ?」声の方に振り返った時雨は目を疑った
「ア・・・アイオワ?」 「うるさいわね、アンタが下がりなさいよ!」
「ワ・・・ワシントン?」 「この海を赤く、騒がしいままにはできないわ」
「ウォースパイト・・・」  時雨は半分パニックになりながら編成画面を見上げた
戦艦:アイオワ 戦艦:ワシントン 戦艦:サウスダコタ 戦艦:ネルソン 戦艦:ウォースパイト 6番:内川 空母:ヴィクトリアス 軽巡:シェフィールド 駆逐:フレッチャー
暫時、唖然としていた時雨だったが、全てを理解した時、もはや彼の心には雲ひとつ無かった
「勝てる・・・勝てるんだ!」
懐から蜜柑を取り出し、敵空母へ全力疾走する時雨、その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった・・・

翌日、海底で冷たくなっている時雨が発見され、吉村と村田は病院内で静かに息を引き取った