「今度、俺の同級生が結婚するらしいんだ」
「……はあ」
仕事から事務所に戻る車の中、円香はスマホを見ながら生返事した。
「同級生がどんどん結婚していくと、俺もそんな年齢なんだな、って実感させられるよ」
「……そうですか」

「……結婚願望があるんですか?」

円香は運転するプロデューサーへ目線だけ上げた。

「……うーん……難しい質問だな」

一瞬、車の中に沈黙が流れる。

「あなたは……」
「ん?」
「それ以前に、まだ色々やるべきことがあるんじゃないですか」

「……そうだな。その通りだ」
「まあ、周りと比べて遅れているという事実は変わらないでしょうけど」
「うっ……それもその通りだな……」