宇宙誕生の前は無があった。この無というのは哲学的な意味で言う何も無い状態では無い。
敢えて言うならば、エネルギーだけがたゆたう場があった。
時間も無い。より正確にいうならば、量としての時間はあったが方向性は無かった。
方向性が無いというのは、過去・現在・未来を定義することが出来ないという意味だ。
確率論的にしか状態を記述出来ない状態なので、どのtを取り出しても起こりうる事象は確率論でしか求められない。
さいころの例で喩えてみると、無限に続く1から6までのランダムな数列の状態だ。
この数列の任意の場所で二つの短い数列を取り出しても、どちらが先でどちらが後かを決定することは出来ない。
なぜならば、全く同じ短い数列が無限の数列の中には無限にあるからだ。
状態の遷移はあるが、それによって過去現在未来が決定出来ない。時間はあっても時間の矢はない。
真空の揺らぎというのはこういう状態だ。