幸福度の調査では、所得の高いひとは幸福度も高いことがわかっているが、
これは単純に「金持ちほど幸せだ」という話ではない。
ドイツとナイジェリアでは生活水準が大きく異なるが、
高所得層のナイジェリア人は高所得層のドイツ人と同じくらい幸せだという。
重要なのは所得の絶対額ではなく「隣人や知り合いとの比較」で、
相対的にゆたかな者は、相対的に貧しい者よりも大きな尊厳をもてるのだ。
このことは、現代社会において政治的にもっとも不安定な集団が貧困層ではなく、
「ほかの集団との関係で自分たちの地位を失いつつあると感じている中間層」であることをうまく説明する。
ナショナリストは、「経済的地位の相対的喪失をアイデンティティの問題に翻訳する」ことで彼らを惹きつけている。
ベーシックインカムはたとえ実現できたとしても、社会問題の解決には役に立たない。
たんにお金を配っただけでは、社会的な承認を与えることはできない。
無職のひとたちは自尊心の土台を欠いており、
なにもしないでお金を受け取るのはアイデンティティをさらに傷つけるだけだ。