私は、コロナ禍が終息し冷静になったとき、日本人の意識が大きく変わると思っています。
しかし、それは「最先端技術の導入が進む」など、一般的に言われていることではありません。
私が予測するのは、多くの人が「低価格で商品やサービスを提供することが、社会的善だ」
という日本の常識が「妄想」にすぎなかったことを、ハッキリと認識するだろうということです。
これまで日本では、多くの企業がコスト削減を経営戦略の中核に据えて、1円でも安く、
1人でも多くの人に商品やサービスを提供することを目指してきました。
利益がほとんど出ない、ギリギリで生活ができる程度にまで価格を下げることが、
社会のためであると思われてきました。
これが、経済大国・日本が誇る「高品質・低価格」商法というものです。
しかし、今回のコロナ危機で、この考え方の危険性が表面化しています。
当然ですが、高品質・低価格の戦略を実行している企業の生産性は低くなります。
企業の生産性は「付加価値総額÷従業員数」と計算されるからです。
付加価値総額は、大雑把に言うと売上から外部に払うコストを差し引いた金額なので、
どうしても売上、すなわち単価が影響します。
日本の国際競争力ランキングは世界でも第5位です。
このランキングには、提供している商品やサービスの質の高さが反映されています。
一方で、価格が不適切に安価に設定されているため、
生産性は世界第28位に留まってしまっています。
高品質・低価格が「社会的善」であるというのは、平時の妄想です。
平時に自慢していた「日本では非常に美味しいランチをワンコインで食べられる」
という戯言の請求書は、有事のときに突き付けられるのです。
高齢化が進み、社会保障が充実している欧州先進国の物価がなぜあれほど高いのか、
もっと真剣に考えるべきです。