>>968
 ■人間が不死の存在になるとしても、それを望む人は決して多くはないという。

講演で聴衆に「意識を移植してみたいですか」と聞くと、意外にも手を挙げるのは100人いたとして数人にすぎない。私は中学生のころから「死にたくない」と思っていたのだが。

意識の移植が可能になる時代には、今の感覚からすると抵抗のあることがいくつも出てくるだろう。
意識のコピーは許されるのか、複数人の意識を結合していいのか――。いずれも科学的には可能になることだ。

今の倫理や宗教、文化は「人は死ぬ」ということを前提としているが、これも大きく変わっていくはずだ。
数百年後の人類からすると、「昔は『死』なんていう野蛮なものを受け入れていたのか」なんてことになるかもしれない。

(聞き手は柏崎海一郎)

わたなべ・まさたか 1970年千葉県生まれ。東大准教授。専門は脳神経科学。著書に「脳の意識 機械の意識」。