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社会に大きな影響を及ぼす量子コンピュータ

――IBMは、量子コンピュータに力を注いでいます。これは、社会にどんなインパクトを与えるものになりますか。

 量子コンピュータは、これまでとは比べものにならないほどの指数関数的な発展が見込まれるものになります。第1世代のマシンだけで、IBMが開発した過去60年間のコンピューティング性能を凌駕するものになっています。

 さらに次のステップに進むだけで、指数関数的な発展が見込まれます。つまり、量子コンピュータで、何ができるのかを考えることさえも難しいといえます。私自身、これによって、何ができるのかを想像することさえ苦労しています。

 進化そのものは、数学的に推し量ることができ、新たな分子の発見などに応用できることはわかります。
しかし量子コンピュータでは、(人間が)これまで一生をかけても解決できなかったことを数秒でできるようになったり、一生涯をかけて発見できなかったことを短時間に見つけてしまったりすることになります。

 そうしたことを考えた場合に、このマシンの能力が、人や社会にどんな影響を及ぼすのかを想像するは極めて困難です。そして、量子コンピュータによるコンピューティング性能の飛躍に、AIを追加したらどうなるのか。まさに、想像できないものになります。

 私は、最初に量子コンピュータを考えたときには、これを生涯のうちに見ることができるかどうかを疑問視していました。
しかし10年ほど前から、この勢いであれば、量子コンピュータを見ることができると考えるようになりました。

 そして今では、量子コンピュータを必ず見ることができるという確信がある。それだけ、進化が指数関数的になっています。