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「ワトソンの法則」とは何か

 IBMでは、最近、「ワトソンの法則」という言葉を用いはじめた。

 これは、約25年ごとに起こる3度目の技術の変曲点を指す言葉だと位置づける。

 最初の変曲点は、約50年前に、インテルの創業者であるゴードン・ムーア氏が提唱した「ムーアの法則」だ。これは一般的に、「半導体の集積率は18カ月で2倍になる」というものであり、それを実現する形で、CPUは進化し続けてきた。

 2つめは、1995年に、イーサネットを発明したロバート・メトカーフ氏によって提唱された「メトカーフの法則」である。「ネットワーク通信の価値は、接続されているシステムのユーザー数の二乗になる」というものだ。

 そして、いま迎えているのが、「ワトソンの法則」による、3つめの技術的変曲点だ。

 ワトソンの法則とは、「データ量は12ヵ月で2倍になる」ことを指し、そのデータが社会や企業の資産となり、AIの進化にも貢献。そして、AIによって、データが、知識や価値に変わり、ビジネスや社会を変革していくことになるというものだ。

 米IBMのコグニティブソリューション&IBMリサーチのジョン・ケリー氏は、「ワトソンの法則は、過去2つの波に比べて、最も大きな波になる」と前置きし、
「第1波のムーアの法則は、素子が小さくなり、どう集積されていくのかといったことを捉えたものであり、いわば"予測可能"なものだったといえる。
そして、第2波のメトカーフの法則は、ソーシャルネットワークの発展によって、社会をここまで大きく変えたという点で、“意外”なものだったと表現できる。だが、第3波となるワトソンの法則は、これを上回る“衝撃的”なものになるだろう」とする。

 データが資産となり、それが洞察につながり、AIも進化を遂げるのがワトソンの法則によって実現される社会。

「すべてのものが、指数関数的に進化を遂げることになる。たとえば、データを活用することで、癌の再発という難しい課題も解決できるようになるだろう。
想像できなかったことが、解決できるようになり、どんなに時間をかけても解決できなかったことにも答えを導き出せるようになる。
だからこそ、この技術の変曲点がもたらすインパクトは、過去の波に比べても大きなものになる」とする。