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研究チームは、POLG1という遺伝子の一部を変異させて、さまざまな組織でmtDNAの枯渇が誘導されるマウスを作製しました。
mtDNA枯渇型のマウスは、体内のミトコンドリアそのものが減少し、体内のエネルギー通貨であるアデノシン三リン酸(ATP)の産生もうまくいかなくなります。
結果として、食べたものから「細胞が利用できるエネルギー」への変換がほとんどできなくなっているというわけです。

mtDNAの枯渇によってミトコンドリアの機能が低下させられた結果、マウスには「皮膚のたるみ」や「抜け毛」などの目に見える老化現象が引き起こされていることがわかりました。
以下の画像で中央と右のマウスがmtDNA枯渇型ですが、健康なマウス(一番左)と比べると皮膚がたるみ、体毛が抜けてピンク色の肌が見えていることがよくわかります。

さらにマウスを調査したところ、皮膚のたるみは表皮の肥厚・角質の増加・タンパク質分解酵素の増加によって生じていたこと、
抜け毛は毛根を包み込む「毛包」が機能不全になったことで生じていたこと、そして老化に関連する遺伝子部位の発現が変化したことが判明しました。

そこで研究チームは、今度は同じマウスに対してmtDNAの枯渇を誘導する変異をオフにし、
さらにmtDNAを補充することでミトコンドリア機能を回復させました。
すると、マウスの皮膚は滑らかになり、厚い毛皮が戻り、同じ年齢の健康なマウスと区別がつかないレベルにまで若返りました。
以下の画像のうち、左が健康なマウス、中央がmtDNA枯渇型のマウス、右が回復したマウスです。比べてみると、その外見だけではなく、形が崩れてしまった組織も回復している様子がわかります。