齊藤:私は、劇的な社会変化はもはや不可避だと考えています。
そこで問題になるのは、仕事が消失していく過渡期です。

よくベーシックインカム(BI)が必要と言われますが、BIですべてが解決するかどうかわかりません。
そもそも、お金が合理的に存続し得るかどうか自体が疑問でもあります。

私はBIに頼らずとも、衣食住をフリーにすることで、過渡期への対応はできると考えます。
詳しく語る時間がないため省略しますが、それは極めて短期間で技術的に解決可能です。

塩野:衣食住がフリーとなり、仕事の概念自体もなくなったら、個人は何をすればよいと齊藤さんは考えますか?

齊藤:人類は長らく、生活の糧を得るために長大な時間を仕事に割いてきました。しかし、新時代は、生きるために働くことが不要なので、人類の歴史上、初めて自分の好きなことだけを追求できるようになります。

そんな自由を与えられたとき「では、あなたは何をしますか?」という問いに答える準備をそろそろ始めるべきです。
実は、わたしも今、365日働き詰めです。

だから、3日間完全な休みとなったら、2日目から何をしたらいいかわかりません(笑)。
社会復帰できないかもしれない。しかし、その状態こそが病的なのです。

私も含めて、まだ誰もフリーの世界への準備をしていません。ですから、頭の中でシミュレーションを行い、多様な議論を始めるべきです。
そのとき、農耕開始以来の1万5000年のこれまでの人類の社会の常識は脱ぎ去って考えることです。

単に通話しかできない最初のデジタル携帯電話が普及し始めた20年前、それが現在の万能なスマホに進化するとは、誰もが夢にも思わなかったはず。同じように、20年前を振り返ると、「そういえばみんな労働をしていたな」と懐古するようになるでしょう。

とはいえ、人は働くことをやめたりはしないでしょう。
特に日本人は、人のため、社会のために、対価が得られなくても働きたいという人がたくさんいます。そういうボランティアワークが広がると思います。

そして、AIとスパコンでも解決不能な地震や津波など天災に対する準備や対処法の確立だけは人間に必要です。
これらの、生活の糧を得る以外の目的では、初めて世界中の人類が一致団結して臨まなくてはならない、重要な課題がまだまだ残っています。