科学者の中にはこの宇宙がシミュレーションである可能性を指摘している人々がいる。
彼らの主張によれば、私達が見たり触れたりしているすべてのものは
バーチャルゲームのプレイヤーによって造りだされた模造品であって、
人間もそのゲームの中のおもちゃとして使われているのかも知れないという。

映画「マトリックス」ではシミュレーターからセンサー入力によって、
タンク内に入れられた脳に仮想空間が与えられていた。
しかし、私達の宇宙では、脳自体がシミュレーションの産物である可能性さえある。

人工知能研究所の創設者の一人、マービン・ミンスキー氏は、「私達がコンピュータの
シミュレーションの中の存在なのか、そうでないのかを見分けるのは非常に難しい」と話す。
プログラマーが何らかのミスを犯していないかぎり、物理法則のどこかが正しくないとか、
丸め誤差が存在しているといったことに気がつくのは困難だろうとミンスキー氏は指摘する。

ボン大学のサイラス・ビーン教授も数年前、ミンスキー氏と同様、
私達はシミュレーション世界に生きている兆候があると示唆した。

現在、多くの研究者たちが極微小スケールで、宇宙のシミュレーションを行なおうとしている。
基礎的なレベルでの物理のシミュレーションを行うことは、多かれ少なかれ、
宇宙の仕組みそのものをシミュレーションすることであるとビーン教授は言う。