>>902
「竜馬がゆく」そんなに読みにくいかな?
むしろ、当時の小説にしてはカナが多く漢字が少ないし、読みやすいと思うけど....

  竜馬は、うまれおちたときから、背中いちめんに旋毛(せんもう)がはえていた。
 父の八平は豪毅な男だったからこれをおかしがり、
 「この子はへんちくりんじゃ、馬でもないのにたてがみがはえちょる」
  といって、竜馬と名づけた。

  八平はよろこんだが、死んだ母の幸子はいやがり、
 「猫かもしれませぬよ」
  と心配した。幸子の記憶では、ちょうど懐妊したころ、可愛がっていた雄猫が寝床を
 恋しがってしきりと幸子の腹のうえにのぼってきていたことをおもいだしたのである。

これが松本清張の時代小説になると、同時代の作品であってもずっと文章が硬くなる

  例刻、側用人(そばようにん)水野美濃守(みののかみ)が登城してきた。この人はいつも
 身体を真直ぐに立てて御廊下を歩く。色が白くて背が高いから、爽快に見えて威厳があった。
 長年、大御所家斉(いえなり)の側用人を勤めてきたから、威福があるのは当然だった。見る者に
 自然とそう映るのだ。御廊下ですれ違う大名で、老中に出会ったときのように身を縮める者もいた。

  鼻梁(びりょう)が隆(たか)くて、顎(あご)が少し短いところが叔母にそっくりだ、と大奥の女中に
 人気があった。側用人は大奥にもはいっていける。美濃守の叔母はお美尾(みお)の方といって、
 家斉の妾の一人であった。美尾は死んだが、上掾iじょうろう)として奉公しているときに、彼女を
 知っている女中が、大奥に多かったのである。

吉川英治の作品なども、司馬遼太郎と比べたら、大衆作家とはいっても文章がずっと硬い