Spiceシミュレーションの不具合点4:FETの小電流gmが合わない

SpiceではJ-FETもMosもgm伝達特性は完全な二乗特性と見なして計算する。
従ってgmは√Idに比例し、Vgs-gmカーブは直線でVpでゼロと交差して急峻にカットオフする。

ところが実際の素子は小電流では二乗特性から外れてLogカーブに移行する。
例えば東芝の小型Mos:SSM3K7002はデータシートでId=100m/10m/1mAj時でgm(Yfs)=300m/55m/7.5mSと読めるが、実測してみると同じ電流条件でgmは250m/45m/5mSと大きく低下し、10mA以下ではBJTと同じLog特性を示している。

Spiceでは、Id=100mAでgm係数を合わせると1mA時にgm=30mS、0.1mAではgm=10mSと計算されるが、実際には0.1mAではgm=0.5mSまで落ちているのである。

FETをSWとして使う時はgm電流特性のずれは無視できるが、小電流でアナログ的な増幅素子として使う場合は、動作点での実測特性に合わせてパラメータを調整しなければならない。
低周波に限れば、ソースに指数関数特性のDiを入れてId-gm特性を現物にマッチさせることは出来るが、Cis, Cosの電流が外付けしたDiに流れてしまうので歪特性などは正しく評価出来ない。