まだ夜明け前に目を覚ます。
準備をして庭に出ると、澄み切った空気の中、美しい夜空に目を奪われる。
3等星までが輝く空に時折流れる箒星。
星明かりの下、人影に驚いたリスがあわてて巣に戻るのが見える。
3台所有する車から、4輪駆動の車を選んで乗り込む。

15分ほど国道を走って未舗装の道に折れ、誰もいない薄明の海岸へ出る。
静かな海には、まだ冷たい朝の空気と暖かい海水との温度差で一面に水蒸気が立ち上っている。
次第に明けはじめる空と幻想的な海を見ながら黙々と竿を振る。
遠くの海面にイルカの背びれが見え隠れするのを眺めていると、最初の魚がかかる。
70cmを超える銀色の砲弾のようなサケだ。
血抜きをして鰓と内臓を抜く。
大量のイクラは丁寧に取り分けてビニール袋に入れ、本体と一緒にクーラーボックスへ。
日が完全に昇るころにはもう一匹を追加し、家へ戻る。

素早くサケを解体し、1匹分は燻製用に塩をして地下室へ。
もう一匹は半身を切り分けて冷凍、半身は近所へお裾分け用と今日明日食べるために切り身にして冷蔵庫。
イクラはばらして酒と昆布しょうゆで漬け込んでおく。

起きてきた妻にコーヒーとパンの朝食を出してもらう。
裏の森で採れる胡桃を入れて焼くパンに、自家製のラズベリーと山葡萄のジャムを塗る。
サラダは家庭菜園から収穫したトマトとクレソン、レタス、ブロッコリー。

朝ごはんを食べたら、カヌーを担ぎ、子供をつれて近くのきれいな川へ。
自由に漕がせて遊び、ヤマメやイワナを釣らせ、釣った魚の下処理と捌き方を丁寧に教える。
帰りがけに河畔林でおいしい平茸をどっさり採ってくる。

庭の畑を見回り、ビニールハウスから食べごろになったナス、ピーマン、ズッキーニを収穫する。
作り置きしておいたトマトピューレを使い、冷製で2・3日食べられるようにラタトゥイユを作っておく。
もぎたての新鮮な野菜を使うと驚くほどうまい。

昼食は近所の漁師からもらった大きなホタテと、採ってきたキノコ、サケとほうれん草のパスタ。
腹ごなしに間伐材を斧で割り、ピザ窯用の薪を作っておく。
木陰に吊ったハンモックで本を読み、ちょっと昼寝。

午後は妻に頼まれていた小さめの本棚と欅の一枚板を使ったサイドテーブルを木工小屋に篭って仕上げる。
一息つくと、ハンター仲間が鹿肉のソーセージと食べごろの熟成したバラブロックを持って遊びに来る。
鹿のバラ肉は肋骨を残して切り分け、煮込んでスペアリブに。
薫り高いソーセージと自家製スモークサーモン、家庭菜園のバジルをピザ生地に乗せ、窯で焼く。

やがて雄大な山々の向こうに日は沈み、ウッドデッキで宴会が始まる。
仲間が3日かけて追い詰め、仕留めた巨大なヒグマの話で盛り上がり、子供も目を輝かせて聞いている。
再び降るような星空の下、田舎の夜は更けていく。