>>438の続き

トイさんがちくわぶ漁を営む佐々木家に嫁いだのは17才の時。
「当時は大変だったよ。亭主は優しい人だったけど、仕事には厳しくてね」

そんなご主人は出征して帰らぬ人となりました。
以来、トイさんはご主人に代わってちくわぶ漁を守ってきました。

「若い人たちは“ちくわぶは苦手”って言うでしょ。悲しくてね。本当の味を知ってもらいたいね‥‥」
今では高級食材となって、一部の人の口にしか入らないちくわぶをなんとか若い人たちにも知ってもらいたいと、
トイさんは規格外で出荷できないちくわぶを地元の小学生たちに食べさせる活動をしています。

料理会ではトイさん自らが腕を振るいます。
新鮮なちくわぶの刺身はここでしか食べられません。
おでんに入れると、ちくわぶの淡白な身が汁を吸って得も言われぬ味になります。
「おいしい!」「お星さまみたい!」
子供たちの笑顔にトイさんの顔もほころびます。


― トイさんにとってちくわぶ漁とは
   「人生だね(笑)これしか知らないでやってきたからさ。生きてる限りは続けるよ」
と目を細めて語ってくれました。