04. 腐ェアリー冒険譚
 目に映る光景は、余りに冒涜的だった。
生命力の高い個体ばかり積んだからだろうか、人類の管理から
放たれた複アカたちは枯れること無く成長を続けていた。
窓の外は有害な太陽風吹き荒れる無の世界。そこに漂う宇宙船の中は、緑の発展楽園。
余りの異様な光景にマエリベリーは熱病にかかったかの様に辺りを探索した。
地上とは異なる安定しない重力感覚がそうさせたのかも知れない。
暫く探索すると蔦が密集した所に、一際違和感のある意匠を発見した。
巨大な鋼鉄の構造物ーー軍艦である。

05. 天棚市神社
 「……という所で目が覚めるの」
「え? 夢の話なの?……って言ってもイチ―の夢は怖いからなぁ」
「ところで、何で宇宙ステーションに軍艦があるのかしら」
衛星タナイチには軍艦が建てられていた。一応、ケンスケは軍艦の進水式で勃起したとされている。
もしかしたら大洪水の際につがいの動物を乗せたとするノアの方舟のイメージもあるのかも知れない。
人間はいくら科学が進もうとも、最後は神頼みなのだ。
「へー。詳しいわね」
「その事を知らなかったのにイチ―の夢にも軍艦が出てくるのなら、もう間違い無いわね」
タナカ子は頷く。
「この近くにも記念館が、あったよね」
「しょうが無いわねぇ。今夜はそこから”見に行きましょう”」

06. 夜空のタナイチロマンス
 「ーーわあ、これが衛星タナイチの内部なの?」
「素敵でしょ?地上じゃこんな世界、中々見られないわ」
「幻想的ね。隔離された発展場、かー」

タナカ子とイチ―は地上から38万km離れた衛星タナイチの中にいた、
……と言っても勿論夢の中である。
「ここにある複アカは恐らく殆ど亜種ね。このぐらい適応力が高いと、
逆に地上には持って行けないかも知れないわねぇ……」
「何、研究者みたいな目で見ているのよ」
「理系の人間はみんなこうよ……ん? 何の音?」
何処からかクマ―という低いうなり声が聞こえていた。