断食と長生き
https://jein.jp/jifs/scientific-topics/1839-topic157.html
狩猟採集時代の人間も、毎日、食物に出会えたわけではない。人間も最長60日間は食べ物を食べずに生きていくことができる。
ロンゴの指導教授であったロイ・ウオルフォードはバイオスフェアー2の実験に参加した。そこでは計画したように食物が育たなかったので、2年間カロリー制限食を食べた。
ウォルフォードはカロリー制限が生物の寿命を延ばすという研究をしていたからだ。2年間の実験を終えて出てきた時、ウォルフォードはガリガリに痩せていた。
臓器は小さくなり、例えば肝臓は半分の大きさになっていた。ところが普通の食事に戻ったら、体格も臓器も元に戻った。つまり生物は断食後に、いろんな臓器をまったく新しく再生できるのだ。これがロンゴの断食模擬食の根拠だ。
断食をすると不要な組織やダメになった組織は死ぬ。しかし断食を終えた後、ふつうの食事に戻ると、死んだ組織は新しく生まれ変わるのだ。つまり若返るのである。

https://www.technologyreview.jp/s/172624/i-tried-prolons-starvation-diet-so-you-wouldnt-have-to/
ウォルフォードは2004年に79歳で亡くなったが、死因は筋萎縮性側索硬化症(ALS。運動ニューロン疾患、ルー・ゲーリッグ病とも呼ばれる)だった。
ロンゴ教授が記しているところでは、彼の死因について多くの人が、バイオスフィアで体験せざるを得なかった2年間の極端なカロリー制限のせいではないかと疑っているようだ。ロンゴ教授はこの仮説を重要視している。
「カロリー制限が原因だったのかどうかは分かっていません」とロンゴ教授は言う。「しかし、私はウォルフォードがバイオスフィアから出てくる場にいたのです。ウォルフォードは病気に見えました。他の参加者も全員そうでした。
おそらくウォルフォードはその代償を払うことになったのです。運動ニューロン疾患との関連性は分かっていません。
しかし、彼の神経がカロリー制限の極端な状況に何年間も耐えられなかったということはあり得ます。多分、この状況と別の何かの要因が組み合わさったのでしょう」。
得られた教訓ははっきりしている。カロリー制限は寿命を延ばすかもしれないが、長期間にわたってカロリー制限を行なうのは問題であり、おそらくほとんどの人にとって現実的な選択肢ではない。