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一方,同様にエネルギー制限群と炭水化物70?130 g/日制限群を設定し,6 ヵ月後に各パラメーターを比較すると,総エネルギー摂取量が均しく減少し,体重の変化にも両群で差異はなかったが,
炭水化物制限群でHbA1c と血中中性脂肪の有意な改善を認めたとする報告もある40).
総エネルギー摂取量を同等として,低炭水化物食の効果をみたメタ解析では,糖尿病の有無にかかわらず,体重,代謝パラメーターに影響はなかったと報告している41).
一方,日本人を対象とし,炭水化物摂取量と併発症発症率との関係を検討した研究では,どの併発症においても関係は認められないとした42).
2012 年に炭水化物制限の糖尿病状態に対する系統的レビューが発表されているが,現時点ではどのレベルの炭水化物制限であっても,高血糖ならびにインスリン抵抗性の改善に有効であるとする明確な根拠は見出せないと結論している43).
その後のメタ解析では,6?12 ヵ月以内に限ると,低炭水化物食によってHbA1c は改善傾向を示すが,体重減少効果は認めなられないとしている44?46).
これらのメタ解析を解釈する上での問題点として,対象とする研究によって炭水化物摂取量(低炭水化物食の定義)が異なっていること,観察期間がまちまちで,
他の栄養素,エネルギー摂取量の補正ができていないことなどが指摘されている47).
これまでに報告されている低炭水化物食による体重減少効果は,総エネルギー摂取量の減量に伴うものと考えられる.
その反面,肥満の是正を図るために総エネルギー摂取量の制限を行ううえで,炭水化物を減量することの意義は検討の余地を残している.
糖尿病における炭水化物の至適摂取量は,身体活動量やインスリン作用の良否によって異なり,一意に目標量を設定することは困難である.
併発症や薬物療法などの制約がなければ,柔軟な対応をしてもよい.
しかし,総エネルギー摂取量を制限せずに,炭水化物のみを極端に制限することによって減量を図ることは,その効果のみならず,長期的な食事療法としての遵守性や安全性など重要な点についてこれを担保するエビデンスが不足しており,
現時点では勧められない.