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炭水化物の摂取量と糖尿病の発症率との関係を検討した例は少なく,両者の関係は明らかではない.
最近,英国でなされたコホート研究では,炭水化物摂取量と糖尿病の発症率との関係が検討されているが,総炭水化物摂取量と糖尿病の発症率には関係がなく,果糖の過剰摂取が糖尿病のリスクを増したとしている35).
メタ解析の結果では,総炭水化物摂取量と糖尿病発症リスクに有意な関係を認めなかったと報告されている36).
2 型糖尿病の血糖コントロールに対して,消化性炭水化物の制限が及ぼす効果については議論がなされている.
もともと,1 日の炭水化物摂取量が100 g 以下とする炭水化物制限が,肥満の是正に有効だとする研究結果から,糖尿病治療における炭水化物制限の有用性が注目された.
2008 年に発表されたDIRECT 研究は,脂質栄養を中心に総エネルギーを制限した群,総エネルギーを制限し,地中海食とした群,エネルギーをフリーとし,炭水化物を40%エネルギーに制限した3 群を設定し,
その後2 年間の体重の変化を追跡したところ,脂質制限群に比較して,地中海食と炭水化物制限食で有意に体重減少効果が優っていたと報告している37).
しかし,炭水化物制限群でも,総エネルギー摂取量は他の2 群同様に低下しており,体重減量効果が総エネルギーとは無関係に,炭水化物の制限のみによると解釈はできない.
日本人2 型糖尿病を対象に,6 ヵ月間130 g/日の低炭水化物食の効果を観察した研究でも,低炭水化物群で体重,HbA1cの低下を認めたが,同時に総エネルギー摂取量が減少しており38),
その後1 年間の追跡では差異はなくなったとしている39).