状況を全国平均と比較すると、総エネルギー摂取量には差はないが、脂肪エネルギー比率が 25%以上の者の割合は男女ともに 60%を越えており、
全国平均の 40~50%をはるかに上回 っている( 2 )。
この間の交通手段の発達などによる身体活動の低下に加えて、このような脂 質栄養の過剰摂取が日本人における肥満そして糖尿病の増加に大きく関与しているのでは ないかと考えられており、
糖尿病の予防の観点からも対処すべき大きな栄養学的課題となっ ている。
健康な個人または集団を対象として、国民の健康の維持・増進、生活習慣病の予防を目 的とし、総エネルギー及び各栄養素の摂取量の基準を示したものが、
「日本人の食事摂取基 準(2010 年度版)」である( 3 )。
推定エネルギー必要量を基礎代謝量 kcal/日×身体活動レベ ルとし、炭水化物摂取量は概ね 50~70%エネルギー未満を推奨している。
また、この食事 摂取基準では健常人の消化性炭水化物の最低必要量はその基礎代謝量の 20%とし、およそ 100 g/日と推計している。
たんぱく質摂取量については推定平均必要量を 0.72g/kg/日とし、 明確な上限の設定はないが、2.0g/kg 体重/日未満に留めることが適当であるとしている。
脂 質摂取量は 30 歳以上では 25%エネルギーを上限としている。
これらの健常人に対する基準 は、我が国のデータや海外の文献に基づいて算出されており、コンセンサスとしての社会 的価値も高い。
しかしながら、疾病を有する個人または集団に対して、必ずしもそのまま あてはめてよいとは言えない。