<病気腎移植>条件付き了承 厚労省部会、徳洲会病院申請に
https://mainichi.jp/articles/20171020/k00/00m/040/067000c

 厚生労働省の先進医療技術審査部会は19日、東京都内の病院が申請した「病気腎移植」を、「先進医療」として条件付きで認めた。腎臓がんなどの患者から摘出した腎臓を、患部を切除した後に別の慢性腎不全患者に移植する。
今後、先進医療会議を経て、治療費の一部に公的医療保険が適用される見通し。
ただ、日本移植学会は、患者双方にリスクがあるとして実施に反対。当面、手術が行われるのは申請病院と関連施設のみとみられる。

 申請者は東京西徳洲会病院(東京都昭島市)。対象となる腎臓を摘出する患者は、50歳以上▽がんは腎臓1カ所だけで直径7センチ以下▽転移がない▽体内でがんの切除手術が困難−−などに限定して審査を求めていた。
審査部会は、同病院内の移植検討委員会に関係学会の委員を入れることや、5例目までをめどに適切な医療として行われているか、審査部会が監査することなどを条件とした。

 日本移植学会は、移植された患者ががんになる可能性が否定できず、倫理面からも問題視している。「正常に機能するなら元の患者に戻すべきだ」との批判もあるが、同病院は「手術時間が長く、大量出血の恐れがあるため推奨されない」と否定的だ。

 厚労省は「臨床研究」以外での病気腎移植を禁止しており、公的医療保険が適用されず患者らの費用負担が大きかった。
徳洲会の担当者は「条件をクリアできるよう検討する」と話した。審査部会座長の山口俊晴・がん研究会有明病院長は審査について「懸念されているような事項は、条件を付けることで解決できると判断した」と述べた。【渡辺諒、荒木涼子】

 ◇解説 患者にリスク、情報公開を

 がんを取り除いた腎臓であってもそれを求める腎不全患者がいるのは、1997年の臓器移植法施行後も慢性的に提供数が不足しているからだ。
2006年には宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)などが、それ以前から病気腎移植を実施していたことが発覚。日本移植学会などが問題視したが、同病院は臨床研究として09年に再開し、6年間で13例行った。

 同学会は、腎臓の提供者(ドナー)とそれを受ける患者(レシピエント)双方に病状のリスクがあり、「医学的に妥当性がない」との声明を発表している。
ある医師は「最大で直径7センチというがんを切除したら腎機能回復はあまり期待できず、レシピエントは人工透析に頼る可能性もある。移植後は免疫抑制剤を使うので、がん細胞が残っていると増殖を助けるリスクも高まる」と指摘する。

 実施病院にはこうした懸念に配慮し、治療経過の検証のため、情報公開を徹底し、外部から指摘された問題点に誠実に向き合う姿勢が求められる。【渡辺諒】