10歳代半ばになって治療を希望して来院する子供の低身長の原因の第一は「幼少時低栄養」で、第二が「思春期早発」です。幼少時低栄養の場合は、4歳0ヶ月の時点での身長が100cmより低くなっています。

仮に4歳0ヶ月の時点で95cmでしたら、その後の成長が順調であっても、最終身長は平均より5cm低くなってしまいます。

最終の身長は、男性なら166cm(=171−5)、女性なら153cm(=158−5)がすでに予測されます。(男性の最終の平均身長は171cmで、女性は158cmです)

そんな子供の母親に、「お子様は幼児期にしっかりと食べていましたか」と尋ねると、母の答えは2つのパターンに分かれます。

「なかなか食べてくれなくて、食べさせるのに苦労しました」というのが1つ。そして、「うちの子は、よく食べていたはずですけど・・・」というのが1つです。後者の場合は、次のように質問します。

「母乳はよく出ていましたか」
すると、たいていの母は、次のように答えます。
「母乳の出が悪かったのかしら。飲むのにずいぶん時間がかかっていました。そういえば、哺乳瓶のミルクにかえるとよく飲んでいました」

なるほど・・・。よく考えてみましょう。母乳の出が悪いのに、「赤ちゃんを母乳中心で育てなきゃ」と思ってしまうと、赤ちゃんは飲むのに時間がかかり、結局、十分な量を飲む前に満腹感を感じるようになってしまいます。

その結果、乳児期の栄養摂取量が少なくなり、1〜2歳の時点で低くなってしまうのかもしれません。

治療に来るほどの低身長の人で、このような会話のやりとりが多いのですから、治療に来ない程度の「平均身長より多少低い」という人の場合は、1〜2歳の時点で、平均身長より数cm低かったという人が大勢いると思います。

つまり、乳児期の母乳の出が悪かったために、栄養摂取量がわずかに少なくなってしまい、1〜2歳の時点で多少低くなったので、最後まで平均身長より多少低いままになってしまったというケースがたくさんあるであろう、ということです。