つくりなおされるまえの、くだらないほうが発売されるのもいいことだ、と私は考えていました。
ビートルズという偶像がそれによって破壊されますからね。地に堕ちるわけです。
これが裸の私たちです、ペンキできらびやかに塗りたてられ飾られたわたしたちではなく、
希望というようなものもなくなってしまった私たちです、と伝えることができますから。
「裸になったビートルズとは、こんなものですから、ビートルズを神さまのように思ったりするのは、
もうやめにしてください」と言えますから。しかし、現実には、そうはならなかったのです。
結局、さらに『アビ―・ロード』を手早く仕上げることになり、一見、気のきいたようなものを
発売してビートルズの神話を維持させていくことになってしまいました。

――『ビートルズ革命(回想するジョン・レノン)177ページより』