バンドの上手い下手、声がどれだけ伸びる、フレットが正確に抑えられる、
ギターが速く弾ける、ということを問題にしてビートルズの演奏ははかれない
。ビートルズの1969年1月アップル屋上の演奏曲をポールのバンドも演奏して
いる。ジョンというキャラクターの醸すいわば脱-社会的、異人的、底無しの
気味の悪いオーラがバンドに異常なテンションを付与していたのが改めてわ
かる。それは今の観客からすれば逆に忌み嫌われるものかもしれないが、だが
ビートルズに深さや不安定感、透明感を与えていたのが実はそれだった。ビー
トルズはいつも揺れており、安住できず、しかも繊細さをもっていた。それを
注入していたのがジョンだと思う。アップル屋上演奏とポールのバンドを比
較すればわかる。