「ヤー・ブルース」はブルースに対するコンプレックスを持った
ジョン・レノンならではの作品だ。レノンはブルースを演奏出来ず、
ブルースの曲を書くことも出来なかった。

クリームに及ばないのは言うまでもなく、それどころかフリート
ウッド・マック、チキン・シャック、サヴォイ・ブラウンにすら届かない
のがレノンの実力だったのだ。レノンから見れば、ジョン・メイオール
などは神様みたいなものである。

新しく出てきたジェフ・ベック・グループやツェッペリンを耳にしたレノン
はロックンロールに邁進しようとするが、ストーンズのブルース回帰な
「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」と『ベガーズ・バンケット』に打ちのめ
される有様で、全裸になって前衛音楽に走ったのである。

リチャード・コリンズ