色々書いてあるが、いくつかの根本的な問題について答えられている
レスは皆無である。

 ビートルズと同時代のロック・カリスマを結ぶ線はジョン以外には
ない。ポールはあくまでも職人的な作曲家にすぎない。ポールだけで
歌われるビートルズ・ナンバーが気が抜けたコーラのように味気ない
のはポールによるビートルズ・ナンバーで衆目のものとなっている。
そこにはジョンという底無しの、どこにも着地点をもたない特異な
感性が必須であった。

 ポールのみによるビートルズ・ナンバーは凡庸なpop songに過ぎな
い。そのことは90年代からのポールによるビートルズ・カバーが厭に
なるほど全世界で聴かせてくれたおかげで衆目のものとなっている。
 
 ビートルズにあってポールのソロで消えたモノ。それによってポール
が被ったダメージが何だったか。ポールのソロが最もよく物語っている
。popでありながら一級品のartでもあった特異な作品がビートルズの
作品であった。またそこをビートルズ後も継承しえたのはジョンの
音源だった。『John Lennon/Plastic Ono band』はその典型であり
商業音楽でありながら高度な文学性を備えたこの音源は、ポールの
ソロ全作品をもって対抗しても、表現の濃密さで敵うものではない
。言い換えればポールのソロ作品がそれくらいに稀薄で通俗的あると
いうことでもある。

 ポールの才能がジョンというフォーマットの上でのみ開花しうる
ものであったこと。そのことを誰よりも今自覚しているのは他ならぬ
ポール本人だろう。