イン・マイ・ライフ”に関する僕の記憶を話そう。曲作りのためにジョン  の家に赴いたら、ジョンは素敵な歌詞の書き出しを用意していた。
ビートルズが有名になったから、浮浪者みたいに僕ら二人が街の中をギターを弾きながら歩いていたことも、ロマンティックな伝説になるんだよ。映画
には欠かせないシーンみたいにさ。それがジョンの曲のアイディアだったけど、でも彼が曲を準備していた記憶はない。僕の記憶はジョンの記憶と食い違うかもしれないけどね。
 僕は彼に言った。『曲が出来てないなら、僕にやらせてくれ』。そして階段の途中のメロトロンに向かって、頭にスモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズを浮かべて曲を書いた。
”ユ・リアリー・ゴット・ア・ホールド・オン・ミー”や”涙のクラウン”(*おそらく年代的にみて”トラックス・オブ・マイ・ティアーズ”であると思われる)に大きな影響を受けてるね。
 自分の大好きな曲を参考にして、そのスピリットを抽出して、新しい曲を作ろうと試みるんだよ。メロディは全部書いた覚えがある。分析してみても、まさに僕らしい曲だと思う。
歌詞ももちろん作ったけど、曲の構成はいかにも僕らしい。ジョンには、『お茶でも飲んで休んでれば。十分あれば一人で仕上げるから』と言った記憶がある。
 スモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズをインスピレーションに、メロディックでありながらマイナーやハーモニーを入れてブルース風にしようと思ってね。そして部屋に戻って、
『出来た! いい曲だと思う。どうかな?』とジョンに聴かせたら、『いいね』と言うんで、そこからそのメロディを使って残りのヴァースを二人で埋めていったんだ。
 共作した曲についていえば、大抵はジョンが最初のヴァースを作っていたね。曲の方向性が決まる指標のようなものだから、それだけでも十分なんだけど。
こんな言い方は嫌だけど、要するに型番というかね。僕の記憶では、二人で書いて、後でイントロも加えた。これも僕が考えたと思うけど。
 ミラクルズのレコードを想像しながら。ギターのフレーズはスモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズに感じがよく似てると思うよ。だから、この曲はジョンのインスピレーションを基に、
僕のメロディとギター・リフで出来た曲だ。断言したくはないけど、僕の記憶は以上の通り。二人で仕上げた素敵な曲を、ジョンが歌ったわけさ」。