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ただし全てのメジャーリーガーが五輪参加に興味を抱いていないわけではない。フィリーズの主砲ブライス・ハーパー外野手は、野球の世界的発展を志向しているMLBが4年に一度のたった2週間を五輪のために割かないのは理屈に合わないと持論を述べている。シーズン中断による経済的損失や五輪出場による故障リスクを負ってでもMLBは五輪に投資すべきという意見だ。

 確かに野球にあまり興味のない層にアピールしようと思えば、五輪はワールド・ベースボール・クラシック(WBC)やプレミア12とは比較にならないだろう。野球単独の大会であるWBCやプレミア12はそもそも野球に興味がなければテレビを付けもしないだろうが、五輪であれば「なにか面白そうな競技やってないかな?」と何気なくチャンネルをザッピングした人が野球に目を留める可能性が出てくる。

 今回の東京五輪でもたまたまテレビでやっていた競技を見て「このスポーツは面白そうだぞ」と思った方は、けっこういるのではないだろうか。筆者の場合は自転車がそうだった。BMXでの素晴らしいトリックの数々に感嘆し、オムニアムという種目の存在を初めて知って奥深さにワクワクした。こうした効果が五輪では期待できるのがWBCなどとは大きく違うところだろう。

 さて、冒頭で五輪での野球は今回の東京が最後になりそうだと書いたが、実は復活の最大のチャンスがまだ残されている。それはMLBのお膝元であるアメリカで開催される28年のロサンゼルス五輪だ。

ただし現状のままメジャーリーガー不在では、たとえ正式競技として復活しても、その後の未来がない。必要なのは、ハーパーのように五輪参加に熱を持った大物選手たちが声を上げ続け、スーパースターたちが結集する五輪を一度でもいいから実現すること。これが将来に渡って五輪参加の価値と意義を高めることは、MLBと同じく北米の四大プロスポーツに数えられるバスケットボールのNBAが実証済みだからだ。

 バスケットボールでプロの参加が初めて認められた1992年のバルセロナ五輪で、アメリカ代表は「ドリームチーム」の結成に成功した。マイケル・ジョーダンやマジック・ジョンソン、ラリー・バードら殿堂入りクラスの名選手たちの活躍による金メダル獲得は、間違いなくバスケットボールの世界的普及に大きな影響を及ぼした。