中西 太

かつて“怪童”と称された男が高く評価したのはチーム3連勝に貢献した中野の打撃だった。

背番号51の打撃にはほれぼれしたよ。低めの球はうまく拾うし、高めにきた球も打ち返した。守備はまだじっくり見ないと分からない。
しかし小柄で非力でも木浪が持ち合わせていない柔軟性があるよ。阪神のショートは課題だからね。

対DeNAに2戦連続で先発出場した中野は、3本のヒットを「右」「左」「中」に打ち分けた。

つまりバッティングというのは、相手ピッチャーが投げてくる球の力を利用して打つんだ。右打者でもライトに本塁打を打ったDeNAの新人牧が好例だ。
ガンケルの外寄りの球を自分のお尻をたたいて(逆らわずの意味)運んだでしょ。
中野は来た球にうまく反応しているということだ。同じ新人でも対照的なのは佐藤輝の打撃だね。

佐藤輝と中野の2人は体格がまったく異なっている。でも佐藤輝に教えてあげてほしいのは、中野が示した「逆らわずにとらえる」というキーだ。
現状はショルダーダウン(左肩が落ちるという意味)、右脇が空いてたためない、軸足が崩れる…。いくらなんでもこれでは打てない。
やみくもと積極性も違う。あのパワーなんだからとらえたら飛んでいくんだ。体の上も下も同じレベルで動かないと。それをコーチが教えてあげないといけない。

西鉄、日本ハム、阪神監督を含む計9球団で指導者として巡回し、名選手を育て上げた名伯楽は「大きく育ててほしい」という。

何食わぬ顔をしているが本人の心は傷ついているはずだ。今は手を施していないだろうが、どこかのタイミングで首脳陣は教える必要がある。
若い選手が出てくるのは楽しみだ。どのチームも外国人がそろってくるこれからが勝負だけど、阪神は打つべき選手が打てば優勝する大チャンスだよ。