野村克也氏「今の40代監督はだから危ない」

外野手というのは、自分の打撃のことを守備位置についてもあれこれ考えているし、天性の才能だけ
で野球をやっているタイプが多い。そのせいか、戦術や戦略に対して関心がないうえに、指揮官には
向かない人間がほとんどなのです。日頃から考える習慣が身についていないこともあり、『ここは思
い切って攻めていけ』『とにかく守り切れ』と精神論を前面に出しがちで、大味な野球になってしま
うために、まったく面白みがない」

チームの人気選手を監督に据えるのではなく、『この人についていきたい!』と思わせるような、
信頼できる人物を監督に推すほうが、私はチームのためになるのではないかと、つい考えてしまいま
す。

『信は万物の基となす』とはよく言ったもので、選手から信頼されるのは人気や知名度、優れた技術
やたくさんの知識を持っている人間ではなく、ひとりの人間として尊敬されるかどうかに尽きます。

そのために野球の技術だけでなく、人間学、社会学といった人間教育にも時間と労力を割き、組織づ
くりをしていける人物が監督にふさわしいと私は考えていますが、球界を見渡すとそうした人材が乏
しいのは寂しい限りです」

おまけに低迷しているチームの次期監督の座を狙っている野球評論家たちは、球団の上層部を持ち上
げて、処世術だけで監督になろうとしている。こんなことでは悪循環が繰り返されるだけで、チーム
にとっても百害あって一利なしですよ。ファンの方も、『どうしてこんな人が監督になれたんだろう?』
と疑問に思う人が監督になっているようなこともあるでしょうが、それは処世術を発揮して監督になれ
ただけで、監督として本来、兼ね備えていなければならない能力を評価されたわけではないのです」

それに『組織はリーダーの力量以上に伸びない』からこそ、監督は己に対して厳しく、常に知識や情報
の収集に努め、成長していかなくてはならない。孤独と向き合い、不安といら立ちに抱きすくめら
れる宿命から逃れられないのが監督であるからこそ、飽くなき向上心を持ち続けることが大切なので
す」

http://toyokeizai.net/articles/-/104489